夜想 特集「モダン」

我らが夜想、バックナンバーより特集「モダン」。

機械・歯車・飛行機・セルロイド…。現代の幻想美術において一角をしめる人工的なるものへの郷愁。

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この号の表紙・裏表紙は本当に額に入れたいくらい美しく、品の良いデカダンを溢れさせています。

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内容も勿論充実した夜想仕様。

今は語られる事の少ない芸術家、散発的に盛り上がったムーブメント、流れ星のようなイメージ…。

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モダン、という広すぎる空の中に、刹那的な輝きをその闇に引いて。

機械的な物への郷愁とは、翻って人の温もりへの欲求なのだと、誰かの言葉。

愛好家の方へ選りすぐったとっておきの古雑誌も色々と取り揃えております、どうかお気に入りの物に出会えますよう。

鈴木泉三郎 戯曲集「ラシャメンの父」大正八年初版/著者献呈署名・生田耕作旧蔵印

日本の戯曲界をリードした劇作家、鈴木泉三郎の代表作「ラシャメンの父」。

1920年刊行、著者から生田耕作へ宛てた献呈署名入りの物。

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函に剥がれなどありますが、本体は愛書家・生田らしく美しいままに残っています。

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ざっくりとした文字の癖が、ニヒルもダンディも越えた著者のおおらかさを感じさせます。

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刊行当時は生まれていなかった事を考えると、その後お二人が出逢ってから署名をお願いしたのでしょうか。

日本に戯曲が息づく初期段階の名作は、きっと若き文学青年に多大な霊感を与えたのでしょう。背景含めて、麗しい物語が綴じられています。

 

木水彌三郎「秋の雪」 サバト館限定300部の内144番 著者署名入り極美完本

ひり、と冷たい雪。寒さを意識しはじめるこの季節にこそ。

生田耕作が愛した、澄んだ、澄んだ、言葉の結晶体。

サバト館より、木水彌三郎「秋の雪」。

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白と黒、これ以上ないと感じる程の簡潔で高潔な装丁。

著者の人柄を感じる柔らかい毛筆の味、選び抜かれた言葉はページ、そして書物そのものを透き通らせてゆくようで、ぐっと胸に迫ります。

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この時期のサバト館の赤いナンバリングには、何故か心を落ち着かせるような雰囲気があります。

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逸る雪、秋の雪。

読者の情緒も感性もこの真っ白な器に乗せて、いざ美文の季節へ進みましょう。

ただひたすらに美しい、そんな書物です。

随筆集「芝居」 大河内書店 昭和23年初版函帯

芸術の秋、大小様々な劇団の秋公演も目白押し。

多くの文化人に習う機微に富んだ視点、大河内書店よりお芝居鑑賞必携の一冊「芝居」、置いております。

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背に少し剥がれあり、戦後間もなくの刊行物にしては本文用紙など厚みがありしっかりしています。

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短いエッセイにそれぞれの観劇の想い出や拘りなどが詰まっています。

執筆者も非常に多く、演劇を取り巻く未知の感性に出会えるかも知れません。

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戦後の復興期にあって、演劇が人々に与えた活力ははかり知れず、また漸く大っぴらに語れる外国のショーに饒舌になり。

生き生きと、またしみじみと、多くの筆が語る鑑賞の歓びに、現代人としても新鮮な言葉が踊ります。

生田耕作・著「わが偏書記」 サバト館限定300部の内196番

生田耕作著作物の装丁の中でも日本的な趣きがよくでた後期の名作「わが偏書記」。

和紙造りの本文も美しい限定300部の内196番、極美完本です。

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秋にむかい少しづつ景色が枯れてゆく中、目が安らぐような質感・色合い。

書物を語る文人の暖かさ。

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折れや焼けもなし、和紙独特の読み味にこれからの読者の色々が積もるのでしょう。

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常に書物と人と、文化の触れ合う最中にいた著者の、熱く心地よい焚き火のような一冊。

忘れ物を取りにいくように繰り返し読みたくなる本です。

吉井勇 歌集「悪の華」 竹久夢二木版装丁・函

優美で整った語り口、爵位持ち、愛妻家。谷崎・白秋・啄木らと親交を持ち、耽美派ながら誠実な作風を極めた吉井勇の心象がこだまするような歌集。

竹久夢二の手による木版装丁に天金が麗しい一冊です。

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タイトル絵も残酷ながらどこか「粋」を感じさせる雰囲気。

1頁2首という贅沢な配置が吉井短歌の深みある言葉の響きを、より強く共鳴させます。

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約90年前、この本に心震わせたであろう少女の。鉛筆書きなので消せますが、遠い記憶に思いを馳せるのも古書の価値です。

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名のよく通った大文豪にも、志をともにした同人仲間がいて、その彼にもファンがいて、今に残る足あとがあり、いつか今の人達も。

この本もきっと、ずっと巡ってゆくでしょう。

澄んだ歌の内容も、美麗な装丁も、保存状態も全て良好。貴重な一冊です、オススメいたし升。

寺山修司「不良少女入門-僕の愛した少女」初版帯

日本文学史に残る「こじらせた」作家、寺山修司の少女観、そしてその源泉とは。

寺山修司「不良少女入門」、かわいい表紙もきれいなままの初版帯付き入荷しています。

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赤黒ベースの本体に少女の淡やかな白い肌、まったくもって映えます。

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一般的には「田園に死す」の白塗り学帽的なイメージの寺山修司の、ひたすら自分に必要な「美学」を貪っていた青春時代のお話がたっぷり。

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そして、ある意味二宮金次郎的なストイックさすら感じるその視線が投げられた銀幕に、物語の幕間の一瞬に、彼の目に焼き付けられたヒロインたち。

研ぎ澄まされた美しさは、いつの時代も不良とカテゴライズされるのかもしれません。寺山入門としてもオススメです。

谷崎潤一郎「鍵」初版極美

谷崎一流の流麗な言葉のパズル、心の組木細工が味わえる名作「鍵」。

中央公論社函付き初版、ほとんどダメージなしの極美本です。

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棟方志功の民芸調の装丁ながら、扉絵から感じる生々しく踊る命の芳しさ。

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挿絵も多く、スッキリとした印象のページ。故に活きてくる濃密な愛慕の物語・・。

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背徳を感じる程度には残る善性混じりの悲しい想い・愛欲と、それを軽々と越えて飛翔する罪深い恋のたくらみ。

映像化の機会も多かった本作は、心の危険な扉を開ける囁きも多々。どうぞお気をつけて読み進め下さい。

「うつわ・あにゆある」創刊準備号 澁澤龍彦・塚本邦雄 他

 

秋と言えば、名月に傾ける団子と盃。そしてウツワ。

幻の冊子うつわ・あにゆある、創刊準備中が棚からぽとり。

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高名な古楽器製作者からイッセーミヤケ、我らが澁澤龍彦氏などなど。

ちょっと豪華過ぎるメンバーがそれぞれのウツワ観をアンケート形式に語ります。

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よく見れば編集サイドもゴージャスな顔触れ、この冊子を世にだした器皿産業様に乾杯です。

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英訳版とセットになっていたり繋がりの分からない各方面の人選と、どこか不思議なこの冊子。

大物達のエピグラムめいたウツワ観と相まって、秘密結社の機関誌のような雰囲気が、秋の夜長の枕元に妙に合うようです。

里見惇「桐畑」 太陽堂・大正10年初版


人の心の機微を鋭く観察し、あくまで善心に寄ろうとしたまごころ文士・惇。

素朴な装丁の桐畑、状態も良好に大正十年の発行です。



 

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紙の手触りがなんだかホロリと懐かしい。函もダメージ少なく残っています。

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この時代の本としては、本文デザインなどから現代的な印象を受けます。

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著者本人はかなりのプレイボーイだったようですが、故に自他の多くの心の軋みとも向き合って生きたのでしょうか。

それらに立って尚、優しい眼差しを保つ文章は、間違いなく美しい様々を読後の私達に残してくれます。