塚本邦雄「夏至遺文」初版カバー

数多くの句集を通じて、精神や神経の甘い軋みを描写した塚本邦雄。

こちらは数少ない小説、のうち極短い作品を集めた夏至遺文。一篇一篇が、鮮烈です。

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本文、表紙、共に良好な状態。

鮮やかなイエローの栞紐も時折作品を読む目に刺激になります。

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ショート作品特有の読みやすさと没入感はそのままに、どこか熱に浮かされたような心地よさ。

夏が一番遠くなった今、読みたい作品です。

泉鏡花「斧琴菊」初版美本

生田耕作による紹介や幻想文学ブームなどを経て、現在また愛読者を増やす泉鏡花。

雪岱の装丁も美しい「斧琴菊」、初版の物が入りました。

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極めて品の良い配色にモチーフ、経年の痛みも軽度に済んだ良い保存状態です。

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開く姿も美しく、書斎の灯りや木材の背景に収まります。

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日本の幻想文学の最初の一人とも目される泉鏡花が日本的なる美より取り出した夢の結晶は、時を経るほど美しさを増して、読者の前に何度でも姿を現す様です。

秋の涼しく長い夜にこそ開きたい、厚手の一冊です。

特別編 日夏耿之介「転身の頌」 中央公論社三重函入り極美本

[書肆ゲンシシャ古写真展 蔵書コーナー出品書籍より]

日本の初期耽美派における偉大な柱の一人、日夏学匠。

その処女詩集「転身の頌」、中央公論社より限定復刊186/300番。

三重函も厳めしく、初期衝動に溢れた若き日の探求者の言葉が木霊します。

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流石本体にはヤケ傷破れどころか塵のひとつも付かず、大切に守られた最初の言葉。

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当時の銘文も再現。暴かれども暴かれども、枯れる事のない言葉の墳墓、金言の泉。

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今見る復刻版とは趣を異にする、神経質なまでの豪華さと再現性のバランス。

この本から彼の作品に傾倒してゆく読者がいれば、それはとても幸せな出逢いに違いありません。

書肆ゲンシシャ様のストレートに文学を愛する側面を感じる出品です。

特別編 阿部公房「事業」 ビブリオマーヌ刊行アクリルケース入り限定223/300部

[書肆ゲンシシャ古写真展 蔵書コーナー出品書籍より]

圧倒的な装丁のクオリティと少部数発行、潔癖なまでの選書。

佐々木桔梗氏による伝説的な美麗装丁本出版社・ビブリオマーヌより阿部公房「事業」。

ユートピアの文字がモダンかつ暗示的な限定223/300部、書肆ゲンシシャより会期限定にて到着しております。

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アクリルケースに閉じ込められ、守られた拘り満載の本体。

発売当時の柔らかい白色を湛えています。

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このような出版物があった事にただただため息が出るばかり。人肉食を扱った際どい作品ながら、佇まいは不気味なまでに静けさに溢れています。

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本文の端を敢えて裁ち切らず、触感に訴えるこう言ったディテールもまた物語への奥ゆかしい味付けに。

ショッキングな文化にも切り込み、蒐集し、美学を再発見してゆく書肆ゲンシシャ様らしい、おぞましくも美しい一冊です。

市丸端唄名作集・金子國義装丁挿画 ソノシート4枚付き ビクター

一瞬目を疑う金子國義装丁挿画の文字。

画伯の風流を愛した一面が生んだコラボレーション、市丸端唄名作集。

ソノシートの響きに誘われて、小道に盃を捧ぐ夜。ビクター刊行。

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いかにも日本的な配色に日本的な美人画。

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むかし懐かしソノシート、歌詞も完備につき今日から口ずさめる名曲の数々。

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ソノシートの艶やかな発色や、文字の配置などにモダンな読みやすさを感じるのはやはり画伯の装丁の力も大きいのでしょうか。

本格的な日本画にも取り組んでいた画伯の貴重な軌跡が滲む、非常にレアな一冊ながら、収録内容にも抜かりなしの渋すぎる品になります。

夜想 特集「モダン」

我らが夜想、バックナンバーより特集「モダン」。

機械・歯車・飛行機・セルロイド…。現代の幻想美術において一角をしめる人工的なるものへの郷愁。

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この号の表紙・裏表紙は本当に額に入れたいくらい美しく、品の良いデカダンを溢れさせています。

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内容も勿論充実した夜想仕様。

今は語られる事の少ない芸術家、散発的に盛り上がったムーブメント、流れ星のようなイメージ…。

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モダン、という広すぎる空の中に、刹那的な輝きをその闇に引いて。

機械的な物への郷愁とは、翻って人の温もりへの欲求なのだと、誰かの言葉。

愛好家の方へ選りすぐったとっておきの古雑誌も色々と取り揃えております、どうかお気に入りの物に出会えますよう。

鈴木泉三郎 戯曲集「ラシャメンの父」大正八年初版/著者献呈署名・生田耕作旧蔵印

日本の戯曲界をリードした劇作家、鈴木泉三郎の代表作「ラシャメンの父」。

1920年刊行、著者から生田耕作へ宛てた献呈署名入りの物。

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函に剥がれなどありますが、本体は愛書家・生田らしく美しいままに残っています。

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ざっくりとした文字の癖が、ニヒルもダンディも越えた著者のおおらかさを感じさせます。

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刊行当時は生まれていなかった事を考えると、その後お二人が出逢ってから署名をお願いしたのでしょうか。

日本に戯曲が息づく初期段階の名作は、きっと若き文学青年に多大な霊感を与えたのでしょう。背景含めて、麗しい物語が綴じられています。

 

木水彌三郎「秋の雪」 サバト館限定300部の内144番 著者署名入り極美完本

ひり、と冷たい雪。寒さを意識しはじめるこの季節にこそ。

生田耕作が愛した、澄んだ、澄んだ、言葉の結晶体。

サバト館より、木水彌三郎「秋の雪」。

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白と黒、これ以上ないと感じる程の簡潔で高潔な装丁。

著者の人柄を感じる柔らかい毛筆の味、選び抜かれた言葉はページ、そして書物そのものを透き通らせてゆくようで、ぐっと胸に迫ります。

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この時期のサバト館の赤いナンバリングには、何故か心を落ち着かせるような雰囲気があります。

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逸る雪、秋の雪。

読者の情緒も感性もこの真っ白な器に乗せて、いざ美文の季節へ進みましょう。

ただひたすらに美しい、そんな書物です。

随筆集「芝居」 大河内書店 昭和23年初版函帯

芸術の秋、大小様々な劇団の秋公演も目白押し。

多くの文化人に習う機微に富んだ視点、大河内書店よりお芝居鑑賞必携の一冊「芝居」、置いております。

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背に少し剥がれあり、戦後間もなくの刊行物にしては本文用紙など厚みがありしっかりしています。

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短いエッセイにそれぞれの観劇の想い出や拘りなどが詰まっています。

執筆者も非常に多く、演劇を取り巻く未知の感性に出会えるかも知れません。

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戦後の復興期にあって、演劇が人々に与えた活力ははかり知れず、また漸く大っぴらに語れる外国のショーに饒舌になり。

生き生きと、またしみじみと、多くの筆が語る鑑賞の歓びに、現代人としても新鮮な言葉が踊ります。

生田耕作・著「わが偏書記」 サバト館限定300部の内196番

生田耕作著作物の装丁の中でも日本的な趣きがよくでた後期の名作「わが偏書記」。

和紙造りの本文も美しい限定300部の内196番、極美完本です。

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秋にむかい少しづつ景色が枯れてゆく中、目が安らぐような質感・色合い。

書物を語る文人の暖かさ。

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折れや焼けもなし、和紙独特の読み味にこれからの読者の色々が積もるのでしょう。

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常に書物と人と、文化の触れ合う最中にいた著者の、熱く心地よい焚き火のような一冊。

忘れ物を取りにいくように繰り返し読みたくなる本です。