河村錠一郎「世紀末の美学」 1986年 研究社出版初版

イギリス美術の研究家にして、ビアズリー関連の多くの著作を持つ著者。

その知見溢れる、世紀末芸術への一大展望。研究社出版刊行の良質な一冊が入荷しています。

帯、表紙、本体、良好な状態です。

目次に踊る数々の単語に、すでに引き込まれるような高揚を感じます。

図版も豊富に差し込まれ、時代毎に必ず訪れる世紀末という空気の豊穣を存分に味わえる内容です。

頽廃と混乱と、感傷と抒情とに彩られた世紀末。

その麗しい世界の機微を愉しめる、読み応えある一冊。お勧めを致します。

窪田般彌「孤独な色事師 ジャコモ・カザノヴァ」 1972年 薔薇十字社初版

稀代の好事家にして芸術家、カサノヴァ。

その放蕩の代名詞たる彼の研究に没頭した訳者による魅力溢れる一冊、薔薇十字社の意欲的な刊行。

マスタード色を基調とした装丁に漂う、どこか悲しげな享楽の薫り。

函にややイタミ、本体は良好な状態です。

虚飾とともに栄華を極めたサロンを渡り歩いた伝説的な社交家の生涯を丁寧に追う、優れた作品です。

カサノヴァという人物を通して古い社交界の文化、その栄華盛衰にも触れられる一冊。

極めてユニークな書籍となっています。

アンリ・ミショー「試練・悪魔祓い」 小海永二訳 1972年 サンリオ出版初版

フランスが生んだ孤高の先鋭・ミショーによる限りなく不吉で優美な文学。

彼の全集の翻訳をてがけ、日本の詩壇へと多くの功績を残した小海永二による名訳作品が入荷しています。

経年のヤケ、スレなどはあれど、本文には支障なし。

ミショーの肖像を大胆にあしらった装丁もユニークです。

タイトルを追うだけで、神経に畏怖を擦り込まれるような生々しい幻想を感じます。

その晩年まで制作に打ち込みながらも、どの潮流にも乗らず独自の美を追求したミショー。

彼の追い求めた痛むような緊張の一端に触れる事が出来る良書となっています。

バタイユ「淫らの塔」 生田耕作訳 1983年 サバト館 訳者署名入り美本

煽情的でありながら、限りなく美しい文学を生み出したバタイユ。

日本においてその普及に多大なる影響を与えた生田耕作とサバト館による一冊。

訳者署名本になります。

影に吸い込まれそうになる、漆黒の想定。官能的なラベル様のタイトル。

端正な署名と、書籍本体の保存状態も良好です。

丁寧な漉き見える本文用紙に並ぶバタイユと生田耕作の美学、その一字一句への陶酔。

挿絵も多く、かつ美麗です。

近年、再び注目の高まる文学、アートに於けるエロティシズムとその表現。

危うくも美しいその世界への耽溺を誘う、魅力ある作品です。

ソールタス「太陽王女」 生田文夫訳 2003年 エディション・イレーヌ

「アンドレ・ブルトン没後50年記念展」に際しての目覚しい刊行や、リゴー「自殺総代理店」などの埋もれた名作の復活と、鮮やかな出版を続けるエディション・イレーヌ。

2003年刊行のソールタス〈紫と美女〉短篇叢書の三番、状態の良い物が入荷しております。

宇野亞喜良の誘い込むようなイラストの表紙に、深みのある色・紙質の装丁。

薄く小さな本ながら、強い存在感を示す優れた造りです。

正方形の版型に組まれた、端正な文字と物語。

生田文夫の訳も味わい深く冴えています。

出版、装丁、そして翻訳の三つが織りなす珠玉の小品。

是非お手に取ってその美しさを感じて欲しい一作となっております。

ベルメール「素描画集」 1966年 銅版画一葉付き特装本

特異な球体関節人形で名を馳せ、多くの絵画・立体作品を制作したベルメール。

彼の遺したスケッチや試作画を網羅しその美学を追う貴重な一冊、1966年刊行の特装本。

GalleryLucifer presents「ハンス・ベルメール作品展-交感する身体-」出展作品です。

艶かしい赤味のクロス函、表紙に未綴じタイプの頁を採用し、膨大な量の作品を納めています。

制作年代を追っての解説を付し、膨大な量の図版を補強。

印刷の質も素晴らしく、微弱な線のニュアンスもとても良く再現されています。

驚くべき技術で幻想に生々しい痛みを宿らせたベルメール。

その作品世界を網羅した、素描画集として素晴らしい完成度を誇る一冊になっています。

ミッチェル/リガード「フェノメナ 幻象博物館」 村田薫訳 1979年 創林社 初版

人・物・事、世に溢れる怪奇な様々を豊富な図版と詳細なレポートで大量無尽に紹介する怪書・フェノメナ。

オカルトファンならずとも楽しめる不穏さが魅力の一冊が入荷してございます。

圧倒的な目次の分量は、「少女を狙う石」「空中礼拝」など不可思議な語句のオンパレード。

「腸チフスメアリー」といった怪人譚から「妖精の棺」、そしてUFOまで濃厚なオカルト本ながら、読み物としてユニークな魅力も有しています。

W.ブレイクの描いた猿の絵、力強い画力。

センセーショナルな語句に頼る事なく、淡々と綴られる異界の魅力。

その独特のバランスに引き込まれる一冊となっています。

ジュネ「花のノートルダム」 堀口大學訳 1962年 新潮社 重版

獄中発、コクトー経由にて花ひらく仏文壇へ。

若きジュネの鮮烈な美文を名人・堀口大學の名訳にて、新潮社のロングセラー単行本を是非。

間を大きくとっての赤いタイトルは、多くみられるスタイルながら品を漂わせます。

献辞にも滲む、純粋なる文人の軋むような魂。

どこか目に薄く感じる本文の印字は、文章の密度に対してとても読みやすい印象を受けます。

決して平坦ではない人生を歩みながらも、不朽の美しさを宿した作品を書き続けたジュネ。

フランスを愛した堀口大學による名訳とととに、愛され続ける確かな名著に仕上がっています。

マンディアルグ「ビアズレーの墓」 生田耕作訳 1989年 奢灞都館 普及版 月報新刊スリップ訳者署名付き美本

内容・造本、ともに優れた書籍を次々と出版し、日本の出版史に今も燦然と輝く奢灞都館。

名著「ビアズレーの墓」普及版、訳者署名入りの美本が入荷しております。

仏文学の翻訳者として名を馳せ、また日本の埋もれた名作の発掘に尽力した生田耕作。

小ぶりながらも達筆な署名です。

普及版ながらも、繊細な印刷、丁寧な文字組、フランス装を採用など、こだわり抜いた造りです。

月報、新刊スリップが付属し、保存状態は表紙・本文ともに極々良い状態です。

短い活動期間ながら、数多の優美な書籍を刊行した奢灞都館。

フランス耽美文学、そして生田耕作作品への耽溺の入り口としても是非お勧めを致します。

ジュネ「アダム・ミロワール」 一羽昌子訳 コーベブックス 昭和52年 初版 332/970限定

その美しい装丁と選書で今なお愛好家を唸らせる伝説の出版社・コーベブックス。

銀色の表紙を手繰れば溢れ出すジュネのポエジーを、一羽昌子の名訳にて愉しめる一冊。

帯欠けながら、ビニールで保護された函と本体は極めて良い保存状態です。

大きく贅沢に取られた余白に、必要最小限のインフォメーション。

削ぎ落とされた装飾から溢れ出す芳醇な詩の世界。

多くの作品を収録する全集や、一つの世界を完結させる単行本とはまた違った、いくつかの詩のみを丁寧に綴じたブックレット。

手の中にあって震えるように繊細なその美しさを、是非お確かめ下さい。