特別編 夢人館「ゾンネンシュターン画集」 岩崎美術社初版帯極美

[書肆ゲンシシャ古写真展 蔵書コーナー出品書籍より]

ドイツと二度に渡る大戦が生んだ狂気の色彩と捩れゆくフォルム。

シュルレアリストの称賛を受けながらも、それすらからもアウトサイドを歩もうとした狂画家の貴重な画集、夢人館の光る功績。

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書籍として丁寧に作られ状態は良好に、ページを繰ればめくるめく幻想、否、幻視の世界。

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それが何なのかは辛うじて分かるがそこが何処なのか分からない、そこがどういう処なのか想像はつくがそれが何なのか、分からない。

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理性による感知と感情にダイレクトに変換されるイメージ、いつか境目は溶け合い、奇異な色彩と形態の洪水に安堵を覚えはじめたら。

そこはもう、世界の外側かも知れません。

一人のアウトサイダーアートの作家を扱った画集としては異例なボリュームの本書は、資料としては勿論、ドコカへの旅のお供にもピッタリです。

 

特別編 シャルル・ペロー傑作童話集「眠れる森の美女」 ギュスターヴ・ドレ挿画

[書肆ゲンシシャ古写真展 蔵書コーナー出品書籍より]

各地に散らばる童話を蒐集・研究し、当時を生きる子供たちへ語りかけた「はじまりの児童文学者」ペロー。

明瞭な陰影がどこかダークなドレの大判の挿画を添えて、大人でも楽しめる娯楽作品としての一冊に仕上がりました。

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帯に傷みあり、ですがその他は良好。本体のラベンダーに金の押し加工はいかにもメルヘンながら豪奢。

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一時期流行した残酷系の童話再解釈とは一線を画する丁寧で清潔で、しっかりとした教養と知性に満ちた原初の童話世界。

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珍しい赤頭巾ちゃんの頭髪全景、ゆたかに波打つ髪が当時の少女らしさをリアルに。

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過度で先鋭的な方向へイメージを走らせる事は、その基礎となる部分に土壌としての豊かさがあってこそ。

今でも新鮮さを失わない、希望と善性に立つ存在としての童話世界の住人たち。

彼らと何度でも再会できる幸運に安心しつつ、ページを閉じる事に寂しさを感じつつ、古典は素晴らしいの一語です。

夜想 特集「モダン」

我らが夜想、バックナンバーより特集「モダン」。

機械・歯車・飛行機・セルロイド…。現代の幻想美術において一角をしめる人工的なるものへの郷愁。

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この号の表紙・裏表紙は本当に額に入れたいくらい美しく、品の良いデカダンを溢れさせています。

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内容も勿論充実した夜想仕様。

今は語られる事の少ない芸術家、散発的に盛り上がったムーブメント、流れ星のようなイメージ…。

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モダン、という広すぎる空の中に、刹那的な輝きをその闇に引いて。

機械的な物への郷愁とは、翻って人の温もりへの欲求なのだと、誰かの言葉。

愛好家の方へ選りすぐったとっておきの古雑誌も色々と取り揃えております、どうかお気に入りの物に出会えますよう。

バタイユ「松花状眼球」 生田耕作訳・署名 サバト館初版極美完本

バタイユの傑作「松花状眼球」、生田耕作訳署名入り・サバト館。

当店らしいと言えばこの上なく、サバト館含めた色々な美装本への最初の一冊としても人気の作品です。

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落ち着いた深みのあるグリーン、大きくとられた余白、無駄な情報の一切がない表題、文字組。

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耽美的である事、という事と極めてシンプルである事。

バタイユの描く余分な肉を落としたような純粋な松花状眼球のエロスに、機械的なまでにカチリ、とはまります。

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訳者による構成案を巻末で辿れるのも本書の魅力。

芸術の在り方を探る読書の徒の杖に、きっとなりうる良書です。

バルベー・ドールヴィイ エピグラム集「高貴なる人々に贈る言葉」宮本孝正・訳編

シュルレアリストにも愛された「ダンディなる貴族」、ドールヴィイの高貴な言葉の数々。

レイピアのように鋭く、煌めきをたたえ。宮本孝正の名訳と現代を生きる人々へ。

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単行本ながらこういった本には、やはりシンプルで品のある装丁が求められます。絶妙。

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家の没落を経験し、俗世にまみれる内に身に付いたダンディズム。

本来の身の高貴さも飲み込んだ彼の言葉には、何よりもしなやかで美しい強度のような物が宿っています。

読書家への入り口にも適した適度な緊張感が読みごたえありな良い一冊です。

鈴木泉三郎 戯曲集「ラシャメンの父」大正八年初版/著者献呈署名・生田耕作旧蔵印

日本の戯曲界をリードした劇作家、鈴木泉三郎の代表作「ラシャメンの父」。

1920年刊行、著者から生田耕作へ宛てた献呈署名入りの物。

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函に剥がれなどありますが、本体は愛書家・生田らしく美しいままに残っています。

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ざっくりとした文字の癖が、ニヒルもダンディも越えた著者のおおらかさを感じさせます。

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刊行当時は生まれていなかった事を考えると、その後お二人が出逢ってから署名をお願いしたのでしょうか。

日本に戯曲が息づく初期段階の名作は、きっと若き文学青年に多大な霊感を与えたのでしょう。背景含めて、麗しい物語が綴じられています。

 

鹿島茂「愛書狂」 角川春樹事務所初版帯極美

「わたしには、この本たちを世に知らしめる義務がある─」。

世界中の編集者・書店員がお気に入りの作品を前に思いながらも、中々口に出せない台詞を恥ずかしげもなく惜しみなく。

鹿島茂より届いた奇書怪書ガイドの決定版「愛書狂」、角川春樹事務所の硬派な一面。初版帯付き極美はいっております。

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分厚い、情熱と執念の結晶体。漆黒、です。

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カラー挿絵も豊富、定番の奇書からタイトルの文字列に出会う事も稀な世界の外側にある一冊まで、読書家にとっての遊園地がここに。

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鹿島氏の熱っぽくもライトな語り口が秀逸な一冊。

熟練のコレクターにも読書に興味を持ち始めた若人にも、本を愛するという事の喜怒哀楽がストレートに伝わる良書です。

A.バタイユ・著/小川泰一・訳「結婚の曲」 白水社昭和2年初版

バタイユ、ですがこちらは悲恋物を得意とした劇作家のアンリ・バタイユ。

昭和ひと桁の昔より、白水社による木版装丁も可愛らしい「結婚の曲」入荷しております。

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棚にそうっと飾りたくなるような表紙、深く枯れた青に鮮やかな花。

状態は完全とは言い難いですが、経年の味が定着できるしっかりとした造りの本です。

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美男子アンリの肖像。

戯曲仕立ての物語では貴族の娘と売れない青年音楽家の駆け落ちが、当時の仔細な生活様式を通して描かれます。

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豪華絢爛な貴族社会の晩餐会や衣装のディテール、振舞いの描写と、安宿で睦まじく卵を茹でるカップルの対比を鮮やかに切り取る序盤は、まるで19世紀末のフランス全体を俯瞰する様なリアルさがあります。

アンリ・泰一氏ともに相当な語り巧者。装丁・内容ともに文学少女的な麗しさに満ちた一冊です。

ストリンドベリー 著/杉山誠 訳「令嬢ジュリー」初版帯極美

秋の夜長、コーラ片手のDVDの視聴に疲れたら戯曲を読むのは如何でしょう。

激しくもリズムは緩やかな三拍子、時代の波に翻弄された劇作家ストリンドベリーの名作戯曲「令嬢ジュリー」。杉山訳・三笠書房刊行、端正なルックスの初版帯付き極美本です。

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ビニールカバーもキレイなまま、自然派の素朴さと主人公・ジュリーの情熱を感じる良い装画です。

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台詞と舞台の状況、人物の出で立ちや立ち居振る舞いをテンポよく読める戯曲という記述の愉しみは、物語上のすべてを噛み締めながら緩やかな没入を誘います。

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表情豊かな登場人物たちに寄り添うように、時に恐る恐る、時にハツラツと、彼らにシンクロするようにページを繰る指に熱がこもってゆく感覚。

ジュリーの運命やいかに、ドラマティックで古式ゆかしい読書体験が味わえる一冊です。

ヤンセン 著/種村考弘 訳「リッツェ」初版帯美本

現代線描画の最高峰と謳われながら自ら狂人を名乗ったホルスト・ヤンセン。

彼の「複製拒否」の絵物語リッツェ、翻訳の奇術師・種村訳にして耽美の博覧会場・トレヴィル刊行。

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滴るような赤い装丁を際立たせるヤンセンの絵。タイトルの書体もこれ以外にナシと感じます。

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冬に閉ざされた城、美しい少女と少年たち。ヤンセンの描線が閉鎖空間で起こる無邪気さに導かれた残酷な「性」を、痛々しいほど優しく柔らかく切り取ります。

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子供の頃の残酷な自己の側面を思い出して、大人になってから身震いした方は多いのではないでしょうか。

「美しさ」をそれらに付与しようとするヤンセンの筆は、もしかすると当時の少年ヤンセンへの一つの供養、なのかもしれません。痛みなく、美本です。