ヤンセン 著/種村考弘 訳「リッツェ」初版帯美本
現代線描画の最高峰と謳われながら自ら狂人を名乗ったホルスト・ヤンセン。
彼の「複製拒否」の絵物語リッツェ、翻訳の奇術師・種村訳にして耽美の博覧会場・トレヴィル刊行。
滴るような赤い装丁を際立たせるヤンセンの絵。タイトルの書体もこれ以外にナシと感じます。
冬に閉ざされた城、美しい少女と少年たち。ヤンセンの描線が閉鎖空間で起こる無邪気さに導かれた残酷な「性」を、痛々しいほど優しく柔らかく切り取ります。
子供の頃の残酷な自己の側面を思い出して、大人になってから身震いした方は多いのではないでしょうか。
「美しさ」をそれらに付与しようとするヤンセンの筆は、もしかすると当時の少年ヤンセンへの一つの供養、なのかもしれません。痛みなく、美本です。