町野好昭「マルガリテス」 極美帯付き

異端、耽美、孤高…それらのキーワードと語られながらも、決して特定の美感では捉えきれない静かな妖しさ。

画家・町野好昭が自ら出版した画集マルガリテス。額装可能な14葉の少女画に詩を添えて。

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黒の表紙に銀色の帯、この洗練に佇む静寂の中のエロス。

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時に鮮やかな、時にくすんだ色彩を以て描かれる少女の表情からは何も読み取れず、ただするりと美しいフォルムの中に様々な何かを感じ取れるでしょう。

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どこか宗教的な熱を内包した静かな世界にエロスの香りを感じとるのは、果たして悪い事でしょうか。

決して有名ではない、しかし唯一無二の魅力を宿した本物の作品集。造本も見事です。

須川誠一校訂「装釘の常識」 草人堂/アスタルテ書房

生田耕作監修の下、当アスタルテ書房の発行にて当初9番までの刊行を予定していた愛書家双書。

諸々の事情により中途でその刊行を途絶える事になりましたが、こんな素晴らしい書籍を造る事が出来ました。

須川壮一校訂、草人堂編による「装釘の常識」。黒地に金。

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厚手のビニールカバー、頑強に。

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この赤字が綺麗に出る用紙も、サバト館の試行錯誤の賜物でしょう。

本の装釘に関して理念哲学の粋にまで踏み込む、書物への想いを感じます。

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ただ高価な書籍だけでなく、思い入れのある本には特に長生きして欲しい物です。

そういった全ての愛書家にとってバイブルとなる1冊でありますように。

種村季弘「夢の覗き箱」 初版帯美本

─スエヒロ劇場<外国映画>128本封切り!(帯より)

あらゆる文化をその頭脳に収めていった’歩く陳列室’種村季弘による映画本。

マイナー作品を中心に128本分の大ボリュームで映写機は回り始めます。

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ビニールカバーに守られていたので状態は良し、力強い帯も折れなく残っています。

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洋画と言えば格好いいバイク!

使用カットのセレクトにも映画マニアらしい心憎さがあります。

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第一章の目次、第五章まであります。

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出版当時は今と違い、大容量メディアも情報の氾濫するネットもなく、一期一会な映画も多くあったのではないでしょうか。

それ故に、マニアにとって彼の視聴体験こそが彼にしか見えないコレクションルームだったのでしょう。

もう手に入らない映画の評にもワクワクできる、素敵な本に仕上がっています。

生田耕作訳 A.P.マンディアルグ「ポムレー路地」 サバト館初版極美訳者署名刊行時新刊スリップ付

生田耕作の代表作にしてマンディアルグの代表作、そして恐らくサバト館が最も刷った本の1つ。

押しも押されぬ「ポムレー路地」、今もこの本からマンディアルグ、そして生田耕作作品と出逢う方も多いのではないでしょうか。

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一目見てそれと分かる、品格ある完成された表紙デザイン。

青みを帯びさせ刷られたモノトーンの写真に気概を感じます。

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豊富な写真と合わせて繰り出される猥雑で混沌とした、品のある哀愁。幻想に至る痛み。

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この本には鈴木書店扱いの新刊スリップもあり、書店の一般流通網を通すファン層の拡大も伺えます。

現代においても活発な熱量を持つファンや作家、研究家たちが、その美学を継承しています。

様々な意味で美しい1冊、どうかこの本もそんな人たちに渡りますように。

松本完治訳 ラトヴィン・イヴシック「あの日々のすべてを想い起こせ」 エディション・イレーヌ発行、ブルトン没後50周年記念刊行品 訳者署名入り完本

先日のシス書店様におけるブルトン没後50周年記念イベント。

フランス大使館の全面的なバックアップを受けての「シュルレアリスム集大成」に相応しいその大舞台にて刊行された、記念刊行物4種の内の1冊。

現在の京都が誇る巨人・松本完治の妙訳にて、ブルトンの最期を看取ったイヴシックの熱く静かな回顧録です。

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白い本が2つ、赤い本と緑の本が1つづつ。

こちらは白の片方にて、小ぶりの1冊。ながらも漂う、書籍としての存在感。

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写真も豊富に、晩年のブルトンの仔細な呼吸が、思考の足音が、モノトーンな紙から聞こえてくるようです。

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ブルトンのサインの横に、松本完治の署名。誰よりも生田先生に見せたかったのではないでしょうか。

今は生田耕作署名本の納まったガラスケースに並べております。

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しかし、回顧録であり没後展における刊行物であれど、この書籍はシュルレアリスムの未来を真っ直ぐに指向する輝度に満ちています。

これからの芸術、文芸を担い、味わう方にこそ是非読んで頂きたい1冊です。