相澤啓三 著 / 横尾龍彦 畫「魔王連祷」 1975年 西澤書店初版 帯付き

ボードレール著「悪の華」を挟んで対峙する、詩人・相澤啓三と美術家・横尾龍彦の精神が衝突する。

暗く重く、熱い一冊。

呪詛にも祝詞にも通ずる、ヒリヒリと心を苛む言葉と、フェリシアン・ロップスの描く悪徳の如く心胆寒からしめる版画の暴威が紙上でせめぎ合います。

別刷りのタイトル索引など、書籍自体も凝った造りで、良書を多く作り上げた西澤書店らしい仕事と言えます。

現代のコラボレーションや共作とは一風違った味わいの本作は、若かりし二人の作家だからこそ作り得た強靭さを感じ、とてもユニークな出来栄えとなっています。

サマーズ「吸血妖魅考」日夏耿之助訳 1976年 牧神社初版 箱付き

怪奇幻想の領域にて、その学識の深さも文筆の描く美しさも並ぶ者のいなかった日夏耿之助。

牧神社より刊行されたサマーズ「吸血妖魅考」では、ヨーロッパに深く根付く吸血鬼とその眷属たちの姿が描かれています。

怪談紙芝居を思わせる赤黄の函、表紙。目次から立ち現れる西洋世界の百鬼夜行。


多岐にわたる資料と共に、サマーズの執拗な調査・研究と、日夏一流の美文を以って描き出される夜の支配者たち、凍るように美しい怪異の数々。

翻訳文学に於いて揺るがない名作を多く書きながら、文化研究にも重要な仕事を遺し続けた日夏耿之助の、まさに類をみない一成果。

そしてサマーズの実際的で地道な研究で浮かび上がる吸血鬼たちは、現代の読者様へも強いインスピレーションをもたらす名著です。

稲垣足穂「柳生家=化物コンクール」 1990年 人間と歴史社初版 函付き美本

没後40年を経ても多くの出版社からの新刊が止まず、真に時代を超えて愛される偉大なるタルホ文学。

人間と歴史社より刊行の小振りな一冊は、収録作品・ブックデザインともに新鮮な仕上がりとなっています。

無機質ながらどこか温かみのある銀色の表紙、インパクトのある目次、ページ一杯に広がる本文など際立つセンスを感じます。

小振りなサイズながら充実した作品セレクトで、ファンにとっても非常に満足感があります。

規定という場所の外へ外へと向かうような造本は、確かにタルホ氏本人にも喜ばれそうな魅力があります。

是非店頭にてお手に取って頂きたい一冊です。

荒俣宏「99万年の叡智」 1985年 平河出版社初版 帯付き

今尚、息をするようにあらゆる知識を求め精力的な活躍で世を驚かせる荒俣宏。

本書にては人類が積み重ねてきた多くの学問の内、陽の目を見なかったあらゆる叡智と日陰に生きた求道者たちを語り尽くしています。


豊富にあり、豊富になればなるほど混乱してしまうようなユニークで希少な図版を多数収録。

野心的で目を驚かせるようなデザインも心憎い造りです。

アメリカで独自の発展を遂げたオカルティズムや中華圏の秘密結社群像、歴史的な学者たちの忘れ去られた神秘学説など、目眩のするような奇妙のオンパレード。

1980年代における学問のマイノリティ百科とも言うべき、稀にみる内容の濃さと分量を備えた良書です。

「野中ユリ画文集」2002年 神奈川県立近代美術館刊行

2002年に神奈川県立近代美術館での個展の際に刊行された美しい本。

手の届かない場所で煌めくような、野中ユリの作品世界へ。

ビニールカバーで保護され、図録らしい堅実な造り。紙質も良いものです。

発色の落ち着いた印刷、また文章作品との調和がページ上で取られており、画文集として素晴らしい完成度です。


作家に縁のある人物へのモチーフとした作品もあり、作家の暖かい感情が満ちる麗しさ。

非常に端正な一冊となっております。