中田耕治「ド・ブランヴィリエ侯爵夫人」 薔薇十字社 初版函帯極美

伝説的出版社として今なおファンの多い薔薇十字社。

淡いマーブルの見返しも美しい中田耕治による評伝作品。極美本を入荷しております。

初出は澁澤龍彦責任編集「血と薔薇」、鮮やかなコントラストの造本です。

フランス文学とハードボイルドを愛し、演出家としても活躍した著者による密度の高い論調。

メディアミックスという言葉も無かった時代。演劇や前衛音楽、パフォーマンスや芸術を結びつける役割を文学が強く担っていた時代の重要な人物の著作として。

長く読まれるべき1冊と、新鮮な魅力とともに感じます。

種村季弘「ヴォルプスヴェーデ・ふたたび」 筑摩書房 初版函極美

どこか陰惨な空気の漂う旧西ドイツの、芸術家の集う村・ヴォルプスヴェーデ。

怪人・種村による紀行文とも芸術論とも、怪談ともつかない話の数々。

しっかりとデザインされた造本に豊富な図版は、出版ブーム期の重要な遺産でもあります。

戦時下に亡くなった老画家にまつわる謎めいた逸話や、豊富な知識にて語られる芸術運動の精緻な解説。

参考文献表記の数と比例して膨れ上がる、幻想的な夜の灯り。

種村作品の書籍は装丁が美しく状態の良い物が現在も多く残り、内容的にも好奇心をよく刺激されます。

未読の方にも是非親しんで欲しい、完成度の高い1冊です。

日夏耿之介「残夜焚艸録」 竹村書房 初版限定1000部本

いち早く国内の文学における幻想美の研究に尽力し、後に澁澤龍彦へも影響を与えた日夏耿之介。

随筆を多く執筆した時期に刊行された「残夜焚艸録」、1000部本を入荷しました。

古い書籍ながら、本文はほとんどヤケ・シミなく。印影も美しく残っています。

ゴシック・ロマンを掲げた学匠詩人の扱うテーマは、評論分野に於いても独特の美学が貫かれています。

魔術、幻想、ゴシック…そう言った文化の日本での源流の一つとして、若い読書人の方にも評価の高い日夏作品。

取っつきにくい印象もある評論・随筆ですが、鮮やかな専門性を楽しむに必携の内容が備わっています。

矢野目源一「ヴォルガ浮かれ噺」 アソカ書房 初版

奇異にして偉大な文筆家として文芸史に名を残す矢野目源一による翻訳作品。

失われつつあるスラヴの昔話、伝承よりブラックでユーモラスな物を集めた、貴重なテキスト群。

目次を眺めるだけでも、猥雑ながらどこか教訓を含む小咄の数々に引き込まれる様です。

一瞬縦に読んで「?」となりそうな奥付けも雰囲気があります。

戦後間もなくの書籍で造本も紙の質も荒い物ですが、ロシアの民話を扱った内容は現代においても目新しい内容を孕んでいます。

世俗的な表現も光る物の多く、民話ファン以外にもお薦め致します。

三島由紀夫「橋づくし」 文藝春秋新社 函付き美本

舞台化、海外翻訳も盛んに行われ、三島短編中の傑作の一つとして名の高い表題作「橋づくし」を含む短編集。

モダンな赤い縞が印象に残る函付きの美本を入荷しています。こちらは五刷の物になります。

表紙、本文も状態よく残り、赤の印刷もよく映えます。

どこか魔術的な雰囲気の漂う短編の数々に、モダンな着物の柄を思わせる函のデザイン。

「憂国者」としての印象ではない、鮮烈で新奇なイメージの書き手としての魅力を堪能できます。

夜の短い季節の永い夢のお供にもよく合う1冊です。

中井英夫「とらんぷ譚」 平凡社初版・函帯月報新刊スリップ付 献呈署名

「悪夢の骨牌」「人外境通信」を含む中井英夫の傑作連作短編集。

献呈署名入り、付属紙類完備にて店頭に到着しております。

トランプに準えて配された各単行本作品と書き下ろし作品。

また非常に分厚い本になっておりますが、余白や頁デザインは贅沢に取られています。

色褪せる事のない黒鳥の、万華鏡の様な影の世界へと長期旅行を約束してくれる1冊。

とてもメモリアルなファン必携の書となっております。

堀口大學「随筆集 捨菜籠」 弥生書店初版函美本

「月下の一群」を始めとして傑出した翻訳文学を残した堀口大學による随筆集。

大文学者の若き日の素顔にも触れる事のできる興味深いシーンも多く収録してあります。

白と菫色を貴重とした品のある装丁。

当店にても多く扱う吉井勇など、当時の文壇の交流録なども実作を引きながら楽しく読み進められます。

中には執筆時期の不明な、恋文じみたお話も。

とっつきにくいと感じる方も多い翻訳文学にも、自然と情感を伴って親しみたくなる。

そんな魅力がページの隅々から感じられる1冊です。

橘外男「棺前結婚」 広論社・探偵怪奇小説選集 初版美本

タイトルからすでに不穏な空気の漂う橘外男「棺前結婚」。

広論社選集より程度のよい初版本を入荷しております。

褪せた様な色味の裏表紙に透かしみる陰気な欲望。

二段組み本文も注意深く組まれています。

目次にならぶ言葉をみるだけでゾクゾクとする様な橘外男の世界。

カバンにも入りやすいサイズのこちらの書籍は、夏の遠出にて一服の恐るべき清涼剤になるやも知れません。

ミルチャ・エリアーデ「妖精たちの夜 Ⅱ」 住谷春也・訳 作品社初版帯美本

宗教、民族学に多くの貢献をし、幻想の描写に独自のロマンを持つエリアーデ。

真夏の夜に向けたイメージの着火点のひとつに如何でしょうか。

造本、ミルキィ・イソベ氏。

メルヘンな書名ながら、時に激しい言葉や太字にて強調される単語にひやりとする感覚も。

また、多くの言語をマスターした著者ならではの含む物の多い描写も味わい深く。

お薦めを致します。

古沢岩美「りんごの私のなかのりんご」 バベル社限定46/100番 錦蛇革装・銅版画九葉付極美

シュルレアリスムに刺激された官能的な作品で知られる洋画家・古沢岩美。

バベル社より刊行された「りんごの私のなかのりんご」、本錦蛇革装銅版画9葉付の少部数本を入荷しております。

木箱に納められた鱗の中身は、強い耽美とデカダンの香る銅版画と言葉の数々。

背の山羊革の紅い発色も見事に残っています。

神話世界の住人をモチーフに語られる瑞々しいエロスはピエール・ルイス的な味わいもあり。

造本を含め完結した美しさに溢れる1冊です。