萩原厚生譚 ピエエル・ルウイ「妖婦クリシス」 大正13年再版・発禁本
補修跡も痛々しく、そして誇らしく。
萩原厚生訳によるピエール・ルイス「アフロディーテ」(妖婦クリシス表記)、大正期より発禁本の入荷です。
カヴァーの破れをタイトルシールで塞いだりと、この本の辿った過酷で、そして愛に満ちた歴史を窺わせます。
発禁印、血のように紅く。
海外文学輸入の急先鋒として目にする機会も多い春陽堂、その陰に積まれた多くの悲劇の一冊。
当時の基準とは言え、発禁処分に付されたルイスの名著、田辺の秀訳。
100年ほどの時を傷付きながらも生き抜いたこの本には、愛されるべき確かな美文が今も収まっています。