泉鏡花「斧琴菊」 小村雪岱装丁・初版函極美

以前も入荷のあった泉鏡花「斧琴菊」、こちらは草の色も鮮やかな函付きの美本を店頭に置いてございます。

昭和九年初版の書籍ながら、本文頁の紙の白さも眩しく。

どこから見ても鮮やかな保存状態にて、出版当時と同じ手触りの鏡花作品をお楽しみ頂けます。

文字組みの妙は初版本ならでは。

こういった極々程度の良い物から、読むのには支障がない程度のイタミの物まで、出版当時の御本での読書が多くの作品にて楽しめる現代。

是非沢山の方に古書を手に取る喜びを感じて頂ければと、「斧琴菊」「照葉狂言」を前に願います。

渡辺啓助「鴉白書」 東京創元社 限定13/200部

ゴーストライターとしてデビューし、戦時は大陸視察にも同行した推理作家・渡辺啓介。

晩年の鴉の黒に染められた東京創元社「鴉白書」、限定200部中の13番本です。

画像中央、本人による鴉の墨絵が付属。

絵に親しんだという晩年の傾向を強く感じさせる装丁です。

目次も内容も、一目見ただけでワクワクしてくる様な…。

書籍の各ディテールの担当もしっかりと表記、ファンのみならず美装丁本好きの好奇心も満たします。

近年、中々大手は発行しなくなった限定豪華本。

本書はさらに探偵物作家の豪華本という独自の魅力に溢れており、来歴からくる不思議さもより際立つ一冊です。

町野好昭「マルガリテス」 極美帯付き

異端、耽美、孤高…それらのキーワードと語られながらも、決して特定の美感では捉えきれない静かな妖しさ。

画家・町野好昭が自ら出版した画集マルガリテス。額装可能な14葉の少女画に詩を添えて。

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黒の表紙に銀色の帯、この洗練に佇む静寂の中のエロス。

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時に鮮やかな、時にくすんだ色彩を以て描かれる少女の表情からは何も読み取れず、ただするりと美しいフォルムの中に様々な何かを感じ取れるでしょう。

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どこか宗教的な熱を内包した静かな世界にエロスの香りを感じとるのは、果たして悪い事でしょうか。

決して有名ではない、しかし唯一無二の魅力を宿した本物の作品集。造本も見事です。

須川誠一校訂「装釘の常識」 草人堂/アスタルテ書房

生田耕作監修の下、当アスタルテ書房の発行にて当初9番までの刊行を予定していた愛書家双書。

諸々の事情により中途でその刊行を途絶える事になりましたが、こんな素晴らしい書籍を造る事が出来ました。

須川壮一校訂、草人堂編による「装釘の常識」。黒地に金。

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厚手のビニールカバー、頑強に。

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この赤字が綺麗に出る用紙も、サバト館の試行錯誤の賜物でしょう。

本の装釘に関して理念哲学の粋にまで踏み込む、書物への想いを感じます。

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ただ高価な書籍だけでなく、思い入れのある本には特に長生きして欲しい物です。

そういった全ての愛書家にとってバイブルとなる1冊でありますように。

特別編 テリ・ワイフェンバッハ写真集「Between Maple and Chestnut」 ナズラエリ社美麗印刷装丁本

[書肆ゲンシシャ古写真展 蔵書コーナー出品書籍より]

ただの庭先、ただの草花、なんの工夫もないポーチからの景色。

圧倒的な「普通」に潜む法悦的なまでの美しさをカメラ1台で切り取ってみせる写真家ワイフェンバッハ。

造本と印刷に定評のあるナズラエリ社との黄金タッグにて、木漏れ日の狭間より。

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クロス貼りの色味も質感も、目への滋養たっぷり。優しい、です。

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作品のクレジット以外はひたすら大きく写真だけをプリント。

写真集としてこの上ない在り方。

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滲んだように溢れる色彩と生命の鼓動。

それが涙によるものなら、それは午睡のあくびに、不意に差す日光の明るさに浮かんだ物でしょう。

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ただひたすら、穏やかさと優しさを瞬間の美に宿した写真群。

ヨガなどを利用したリラクゼーションやセラピー関連の人々からも圧倒的な支持を受ける彼女の作品。

造本のクオリティの異様な高さもプラスされ、命の強さが視角を通して分け与えられる最高の鑑賞体験を御約束できます。

特別編 夢人館「ゾンネンシュターン画集」 岩崎美術社初版帯極美

[書肆ゲンシシャ古写真展 蔵書コーナー出品書籍より]

ドイツと二度に渡る大戦が生んだ狂気の色彩と捩れゆくフォルム。

シュルレアリストの称賛を受けながらも、それすらからもアウトサイドを歩もうとした狂画家の貴重な画集、夢人館の光る功績。

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書籍として丁寧に作られ状態は良好に、ページを繰ればめくるめく幻想、否、幻視の世界。

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それが何なのかは辛うじて分かるがそこが何処なのか分からない、そこがどういう処なのか想像はつくがそれが何なのか、分からない。

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理性による感知と感情にダイレクトに変換されるイメージ、いつか境目は溶け合い、奇異な色彩と形態の洪水に安堵を覚えはじめたら。

そこはもう、世界の外側かも知れません。

一人のアウトサイダーアートの作家を扱った画集としては異例なボリュームの本書は、資料としては勿論、ドコカへの旅のお供にもピッタリです。

 

特別編 シャルル・ペロー傑作童話集「眠れる森の美女」 ギュスターヴ・ドレ挿画

[書肆ゲンシシャ古写真展 蔵書コーナー出品書籍より]

各地に散らばる童話を蒐集・研究し、当時を生きる子供たちへ語りかけた「はじまりの児童文学者」ペロー。

明瞭な陰影がどこかダークなドレの大判の挿画を添えて、大人でも楽しめる娯楽作品としての一冊に仕上がりました。

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帯に傷みあり、ですがその他は良好。本体のラベンダーに金の押し加工はいかにもメルヘンながら豪奢。

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一時期流行した残酷系の童話再解釈とは一線を画する丁寧で清潔で、しっかりとした教養と知性に満ちた原初の童話世界。

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珍しい赤頭巾ちゃんの頭髪全景、ゆたかに波打つ髪が当時の少女らしさをリアルに。

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過度で先鋭的な方向へイメージを走らせる事は、その基礎となる部分に土壌としての豊かさがあってこそ。

今でも新鮮さを失わない、希望と善性に立つ存在としての童話世界の住人たち。

彼らと何度でも再会できる幸運に安心しつつ、ページを閉じる事に寂しさを感じつつ、古典は素晴らしいの一語です。

鹿島茂「愛書狂」 角川春樹事務所初版帯極美

「わたしには、この本たちを世に知らしめる義務がある─」。

世界中の編集者・書店員がお気に入りの作品を前に思いながらも、中々口に出せない台詞を恥ずかしげもなく惜しみなく。

鹿島茂より届いた奇書怪書ガイドの決定版「愛書狂」、角川春樹事務所の硬派な一面。初版帯付き極美はいっております。

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分厚い、情熱と執念の結晶体。漆黒、です。

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カラー挿絵も豊富、定番の奇書からタイトルの文字列に出会う事も稀な世界の外側にある一冊まで、読書家にとっての遊園地がここに。

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鹿島氏の熱っぽくもライトな語り口が秀逸な一冊。

熟練のコレクターにも読書に興味を持ち始めた若人にも、本を愛するという事の喜怒哀楽がストレートに伝わる良書です。

吉井勇 歌集「悪の華」 竹久夢二木版装丁・函

優美で整った語り口、爵位持ち、愛妻家。谷崎・白秋・啄木らと親交を持ち、耽美派ながら誠実な作風を極めた吉井勇の心象がこだまするような歌集。

竹久夢二の手による木版装丁に天金が麗しい一冊です。

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タイトル絵も残酷ながらどこか「粋」を感じさせる雰囲気。

1頁2首という贅沢な配置が吉井短歌の深みある言葉の響きを、より強く共鳴させます。

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約90年前、この本に心震わせたであろう少女の。鉛筆書きなので消せますが、遠い記憶に思いを馳せるのも古書の価値です。

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名のよく通った大文豪にも、志をともにした同人仲間がいて、その彼にもファンがいて、今に残る足あとがあり、いつか今の人達も。

この本もきっと、ずっと巡ってゆくでしょう。

澄んだ歌の内容も、美麗な装丁も、保存状態も全て良好。貴重な一冊です、オススメいたし升。

ヤンセン 著/種村考弘 訳「リッツェ」初版帯美本

現代線描画の最高峰と謳われながら自ら狂人を名乗ったホルスト・ヤンセン。

彼の「複製拒否」の絵物語リッツェ、翻訳の奇術師・種村訳にして耽美の博覧会場・トレヴィル刊行。

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滴るような赤い装丁を際立たせるヤンセンの絵。タイトルの書体もこれ以外にナシと感じます。

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冬に閉ざされた城、美しい少女と少年たち。ヤンセンの描線が閉鎖空間で起こる無邪気さに導かれた残酷な「性」を、痛々しいほど優しく柔らかく切り取ります。

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子供の頃の残酷な自己の側面を思い出して、大人になってから身震いした方は多いのではないでしょうか。

「美しさ」をそれらに付与しようとするヤンセンの筆は、もしかすると当時の少年ヤンセンへの一つの供養、なのかもしれません。痛みなく、美本です。