特別編 テリ・ワイフェンバッハ写真集「Between Maple and Chestnut」 ナズラエリ社美麗印刷装丁本

[書肆ゲンシシャ古写真展 蔵書コーナー出品書籍より]

ただの庭先、ただの草花、なんの工夫もないポーチからの景色。

圧倒的な「普通」に潜む法悦的なまでの美しさをカメラ1台で切り取ってみせる写真家ワイフェンバッハ。

造本と印刷に定評のあるナズラエリ社との黄金タッグにて、木漏れ日の狭間より。

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クロス貼りの色味も質感も、目への滋養たっぷり。優しい、です。

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作品のクレジット以外はひたすら大きく写真だけをプリント。

写真集としてこの上ない在り方。

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滲んだように溢れる色彩と生命の鼓動。

それが涙によるものなら、それは午睡のあくびに、不意に差す日光の明るさに浮かんだ物でしょう。

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ただひたすら、穏やかさと優しさを瞬間の美に宿した写真群。

ヨガなどを利用したリラクゼーションやセラピー関連の人々からも圧倒的な支持を受ける彼女の作品。

造本のクオリティの異様な高さもプラスされ、命の強さが視角を通して分け与えられる最高の鑑賞体験を御約束できます。

特別編 夢人館「ゾンネンシュターン画集」 岩崎美術社初版帯極美

[書肆ゲンシシャ古写真展 蔵書コーナー出品書籍より]

ドイツと二度に渡る大戦が生んだ狂気の色彩と捩れゆくフォルム。

シュルレアリストの称賛を受けながらも、それすらからもアウトサイドを歩もうとした狂画家の貴重な画集、夢人館の光る功績。

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書籍として丁寧に作られ状態は良好に、ページを繰ればめくるめく幻想、否、幻視の世界。

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それが何なのかは辛うじて分かるがそこが何処なのか分からない、そこがどういう処なのか想像はつくがそれが何なのか、分からない。

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理性による感知と感情にダイレクトに変換されるイメージ、いつか境目は溶け合い、奇異な色彩と形態の洪水に安堵を覚えはじめたら。

そこはもう、世界の外側かも知れません。

一人のアウトサイダーアートの作家を扱った画集としては異例なボリュームの本書は、資料としては勿論、ドコカへの旅のお供にもピッタリです。

 

特別編 シャルル・ペロー傑作童話集「眠れる森の美女」 ギュスターヴ・ドレ挿画

[書肆ゲンシシャ古写真展 蔵書コーナー出品書籍より]

各地に散らばる童話を蒐集・研究し、当時を生きる子供たちへ語りかけた「はじまりの児童文学者」ペロー。

明瞭な陰影がどこかダークなドレの大判の挿画を添えて、大人でも楽しめる娯楽作品としての一冊に仕上がりました。

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帯に傷みあり、ですがその他は良好。本体のラベンダーに金の押し加工はいかにもメルヘンながら豪奢。

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一時期流行した残酷系の童話再解釈とは一線を画する丁寧で清潔で、しっかりとした教養と知性に満ちた原初の童話世界。

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珍しい赤頭巾ちゃんの頭髪全景、ゆたかに波打つ髪が当時の少女らしさをリアルに。

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過度で先鋭的な方向へイメージを走らせる事は、その基礎となる部分に土壌としての豊かさがあってこそ。

今でも新鮮さを失わない、希望と善性に立つ存在としての童話世界の住人たち。

彼らと何度でも再会できる幸運に安心しつつ、ページを閉じる事に寂しさを感じつつ、古典は素晴らしいの一語です。

鹿島茂「愛書狂」 角川春樹事務所初版帯極美

「わたしには、この本たちを世に知らしめる義務がある─」。

世界中の編集者・書店員がお気に入りの作品を前に思いながらも、中々口に出せない台詞を恥ずかしげもなく惜しみなく。

鹿島茂より届いた奇書怪書ガイドの決定版「愛書狂」、角川春樹事務所の硬派な一面。初版帯付き極美はいっております。

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分厚い、情熱と執念の結晶体。漆黒、です。

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カラー挿絵も豊富、定番の奇書からタイトルの文字列に出会う事も稀な世界の外側にある一冊まで、読書家にとっての遊園地がここに。

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鹿島氏の熱っぽくもライトな語り口が秀逸な一冊。

熟練のコレクターにも読書に興味を持ち始めた若人にも、本を愛するという事の喜怒哀楽がストレートに伝わる良書です。

吉井勇 歌集「悪の華」 竹久夢二木版装丁・函

優美で整った語り口、爵位持ち、愛妻家。谷崎・白秋・啄木らと親交を持ち、耽美派ながら誠実な作風を極めた吉井勇の心象がこだまするような歌集。

竹久夢二の手による木版装丁に天金が麗しい一冊です。

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タイトル絵も残酷ながらどこか「粋」を感じさせる雰囲気。

1頁2首という贅沢な配置が吉井短歌の深みある言葉の響きを、より強く共鳴させます。

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約90年前、この本に心震わせたであろう少女の。鉛筆書きなので消せますが、遠い記憶に思いを馳せるのも古書の価値です。

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名のよく通った大文豪にも、志をともにした同人仲間がいて、その彼にもファンがいて、今に残る足あとがあり、いつか今の人達も。

この本もきっと、ずっと巡ってゆくでしょう。

澄んだ歌の内容も、美麗な装丁も、保存状態も全て良好。貴重な一冊です、オススメいたし升。

ヤンセン 著/種村考弘 訳「リッツェ」初版帯美本

現代線描画の最高峰と謳われながら自ら狂人を名乗ったホルスト・ヤンセン。

彼の「複製拒否」の絵物語リッツェ、翻訳の奇術師・種村訳にして耽美の博覧会場・トレヴィル刊行。

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滴るような赤い装丁を際立たせるヤンセンの絵。タイトルの書体もこれ以外にナシと感じます。

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冬に閉ざされた城、美しい少女と少年たち。ヤンセンの描線が閉鎖空間で起こる無邪気さに導かれた残酷な「性」を、痛々しいほど優しく柔らかく切り取ります。

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子供の頃の残酷な自己の側面を思い出して、大人になってから身震いした方は多いのではないでしょうか。

「美しさ」をそれらに付与しようとするヤンセンの筆は、もしかすると当時の少年ヤンセンへの一つの供養、なのかもしれません。痛みなく、美本です。

「うつわ・あにゆある」創刊準備号 澁澤龍彦・塚本邦雄 他

 

秋と言えば、名月に傾ける団子と盃。そしてウツワ。

幻の冊子うつわ・あにゆある、創刊準備中が棚からぽとり。

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高名な古楽器製作者からイッセーミヤケ、我らが澁澤龍彦氏などなど。

ちょっと豪華過ぎるメンバーがそれぞれのウツワ観をアンケート形式に語ります。

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よく見れば編集サイドもゴージャスな顔触れ、この冊子を世にだした器皿産業様に乾杯です。

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英訳版とセットになっていたり繋がりの分からない各方面の人選と、どこか不思議なこの冊子。

大物達のエピグラムめいたウツワ観と相まって、秘密結社の機関誌のような雰囲気が、秋の夜長の枕元に妙に合うようです。

トワイヤン&イヴシック・著/松本寛治・訳「塔の中の井戸~夢のかけら」 カラー12葉付豪華版

生田耕作の門下にて、その魔術的な翻訳術を学んだ松本寛司。

トワイヤンの妖艶かつお洒落なカット12葉にイヴシックの繊細な詩を添えて、エディションイレーヌより感嘆の吐息と共に。

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造本はアトリエ空中線。やはり間奈美子氏の仕事は、余白に魂がやどります。

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2016年、この夏から秋にかけてブルトン没後50年のイベントを主催する松本氏とエディション・イレーヌ。

フランス大使館の後援をも得るシュルレアリスムへの情熱とフランス文学に対する愛が、この一冊からもひしひしと伝わります。

ウィリー・ポガニー挿画「リヒャルト・ワーグナー タンホイザー組曲」普及版

ワーグナーのかの有名なオペラ「タンホイザー」。

ポガニーの美麗な挿絵が人気の一冊、時間を忘れて見入ってしまいそうな一冊です。

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多少の傷み・汚れあり。

本文、特に挿絵の発色は良好に残っています。

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カラー彩色画は取り外しも可能、鮮烈な印象をうけるペールトーン。

ページを繰るごとに目に飛び込んでくる言葉と図像のデザインに、何時の間にか我を忘れて酔いしれてしまいそう。

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一世紀半、それよりもずっと前から、書物に携わる人々は彼らのイメージを紙の上に現出させるために、あらゆる手段を作ってきたのでしょう。

今では滅びつつある贅沢で奔放な「書籍創り」の愉悦を、存分に楽しめる一冊です。

柳川春葉「生さぬなか(なさぬなか)」 木版美人画二葉付、美本

尾崎紅葉に師事し、泉鏡花らとともに門下四天王と謳われた達人・柳川春葉。

明治・大正にかけて大ヒットとなった連載小説の単行本。木版美人画2葉付きです。

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函・表紙の色彩の鮮やかさに圧倒されます、付属の美人画も額装して飾りたくなる出来栄え。

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当時の特徴的な文字遣い・装飾は、100年後の今にさらに味わい深いです。

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再婚や継母との複雑な関係など、女性や恋愛に対して独自の苦楽を味わった春葉。

美人画への拘りの源を考えると、遥か明治大正をいきた文豪も、少し近く感じるようです。