「筒井菫坡詩歌集」 創樹社 初版函帯極美

若くしてこの世を去る詩人たち、夭逝の一群。

その中にあって一等澄みきった抒情を持っていた筒井菫坡。その短い筆命を辿る良著。

藍色の装丁に、彼の遺した詩歌を身近に感じます。

写真資料も多く、知らずと詩人の生涯へと想いを馳せてしまいます。

日本的なリリカル、どこか神性を含んだ自然描写とそれに込める個としての情感の透明さ。

時代の筆跡を踏襲しながらも、独自の美学が貫かれています。

この書籍の編纂と出版にかかったであろう多くの苦労と、残されるべき作品へ訪れる運命。

それらに胸打たれる、素晴らしい造りの良書となっております。

塚本邦雄「芳香領へ」 ポーラ研究所 初版函帯

多くの歌集に、そのマニアックでイノセントな感性を実らせた塚本邦雄。

「香り」という耽美のエッセンスをひたすらに煮詰めた本書は、数多の文人の著作の中にあっても独自の存在感を振り撒いています。

エキゾチックな函、金色の箔押しをされたクロス表紙。

また本文下部にては頁毎に芳香植物の図版が付され、エッセイと図鑑という2つの要素が特異な混じり方をしています。

植物に関連した塚本短歌プリントの栞も付属。纏まりのあるサービス心。

数多くの歌集の合間に、ユニークな随筆も手掛けた塚本邦雄。

その揺るぐ事のない美感へと、作品集とは違った角度から迫る内容となっています。

山田登世子「娼婦」 日本文芸社 初版函帯

バルザックの研究者として、またファッションや恋愛分野での著作も多い仏文学者による「娼婦」をテーマとした著作。

図版も美しい物を多く収録し、その魅惑的な存在へ深く切り込んでゆく筆致に引き込まれます。

書籍本体は純白の装丁、それはまったく正しいと思わせる説得力ある装丁です。

ファッションにも造詣の深い著者らしく、図版にも極めて美しい物がセレクトされています。

耽美・幻想分野ならずとも、芸術に於けるテーマとして多く登場する娼婦という存在。

その美しさを丹念に綴った、良質な一冊です。

「山崎俊夫作品集」全5冊揃い サバト館初版函帯極美

あまりに濃密な耽美ゆえに、文学史より葬られた鬼才・山崎俊夫。

生田耕作編集による全5冊揃い全集には、その致死性の抒情があます所なく収録されています。

端正な装丁、上質な紙を採用しながら、函背に切り取られた語句には何者の立ち入りも拒否する様な、無垢で痛切な叫びに満ちています。


三田文学が生んだ、純潔なる退廃。その美文の全て。

「美童」「神経花瓶」「玉虫秘伝」「古き手帖より」「夜の髪」、生田耕作とサバト館により残された作品集に今も棲まうそのデカダン。

希少な書籍ながら現在、店頭にてご覧を頂けます。是非その世界へ耽溺下さいませ。

中田耕治「ド・ブランヴィリエ侯爵夫人」 薔薇十字社 初版函帯極美

伝説的出版社として今なおファンの多い薔薇十字社。

淡いマーブルの見返しも美しい中田耕治による評伝作品。極美本を入荷しております。

初出は澁澤龍彦責任編集「血と薔薇」、鮮やかなコントラストの造本です。

フランス文学とハードボイルドを愛し、演出家としても活躍した著者による密度の高い論調。

メディアミックスという言葉も無かった時代。演劇や前衛音楽、パフォーマンスや芸術を結びつける役割を文学が強く担っていた時代の重要な人物の著作として。

長く読まれるべき1冊と、新鮮な魅力とともに感じます。

種村季弘「ヴォルプスヴェーデ・ふたたび」 筑摩書房 初版函極美

どこか陰惨な空気の漂う旧西ドイツの、芸術家の集う村・ヴォルプスヴェーデ。

怪人・種村による紀行文とも芸術論とも、怪談ともつかない話の数々。

しっかりとデザインされた造本に豊富な図版は、出版ブーム期の重要な遺産でもあります。

戦時下に亡くなった老画家にまつわる謎めいた逸話や、豊富な知識にて語られる芸術運動の精緻な解説。

参考文献表記の数と比例して膨れ上がる、幻想的な夜の灯り。

種村作品の書籍は装丁が美しく状態の良い物が現在も多く残り、内容的にも好奇心をよく刺激されます。

未読の方にも是非親しんで欲しい、完成度の高い1冊です。

日夏耿之介「残夜焚艸録」 竹村書房 初版限定1000部本

いち早く国内の文学における幻想美の研究に尽力し、後に澁澤龍彦へも影響を与えた日夏耿之介。

随筆を多く執筆した時期に刊行された「残夜焚艸録」、1000部本を入荷しました。

古い書籍ながら、本文はほとんどヤケ・シミなく。印影も美しく残っています。

ゴシック・ロマンを掲げた学匠詩人の扱うテーマは、評論分野に於いても独特の美学が貫かれています。

魔術、幻想、ゴシック…そう言った文化の日本での源流の一つとして、若い読書人の方にも評価の高い日夏作品。

取っつきにくい印象もある評論・随筆ですが、鮮やかな専門性を楽しむに必携の内容が備わっています。

矢野目源一「ヴォルガ浮かれ噺」 アソカ書房 初版

奇異にして偉大な文筆家として文芸史に名を残す矢野目源一による翻訳作品。

失われつつあるスラヴの昔話、伝承よりブラックでユーモラスな物を集めた、貴重なテキスト群。

目次を眺めるだけでも、猥雑ながらどこか教訓を含む小咄の数々に引き込まれる様です。

一瞬縦に読んで「?」となりそうな奥付けも雰囲気があります。

戦後間もなくの書籍で造本も紙の質も荒い物ですが、ロシアの民話を扱った内容は現代においても目新しい内容を孕んでいます。

世俗的な表現も光る物の多く、民話ファン以外にもお薦め致します。

三島由紀夫「橋づくし」 文藝春秋新社 函付き美本

舞台化、海外翻訳も盛んに行われ、三島短編中の傑作の一つとして名の高い表題作「橋づくし」を含む短編集。

モダンな赤い縞が印象に残る函付きの美本を入荷しています。こちらは五刷の物になります。

表紙、本文も状態よく残り、赤の印刷もよく映えます。

どこか魔術的な雰囲気の漂う短編の数々に、モダンな着物の柄を思わせる函のデザイン。

「憂国者」としての印象ではない、鮮烈で新奇なイメージの書き手としての魅力を堪能できます。

夜の短い季節の永い夢のお供にもよく合う1冊です。

中井英夫「とらんぷ譚」 平凡社初版・函帯月報新刊スリップ付 献呈署名

「悪夢の骨牌」「人外境通信」を含む中井英夫の傑作連作短編集。

献呈署名入り、付属紙類完備にて店頭に到着しております。

トランプに準えて配された各単行本作品と書き下ろし作品。

また非常に分厚い本になっておりますが、余白や頁デザインは贅沢に取られています。

色褪せる事のない黒鳥の、万華鏡の様な影の世界へと長期旅行を約束してくれる1冊。

とてもメモリアルなファン必携の書となっております。