中野嘉一編「稲垣足穂 全詩集」 宝文館出版 初版函帯月報付き

その多くの作品に詩とも散文ともつかない夢幻の筆致を遺し、硬質なオブジェの中へ酩酊を誘う稲垣足穂。

宝文館より刊行のこちらの全詩集は、初期作品から晩年に至るまでの「詩」として発表された作品を網羅しています。

函背にややヤケありですが、銀の箔押し背タイトルや帯なども状態よく残っています。

極短い文の中に詰められたタルホコスモロジーの彗星の様な輝き。

初期作品の一部は「一千一秒物語」の中に紛れ込んでいそうな、無垢な味わいを感じます。

初出一覧や、詩作品にそった年表も附され、編集の中野嘉一氏の情熱に感服します。

天体、ヒコーキ、煙草、少年愛…。

稲垣足穂お気に入りのテーマに溢れながら纏めて読む機会のない詩作品たちを、どうか心行くまでお楽しみ下さい。

加藤郁乎「書評集 旗の台管見」 コーベ・ブックス 初版函付き美本

俳人にして怪男児、変幻自在の言語で多くのインパクトある美文を文学史に残した加藤郁乎。

伝説的出版社コーベ・ブックスより刊行の書評集「旗の台管見」では、彼の詩情の土壌となった多くの本と出会えます。

やや古風な文字組と、薄緑の上質なクロス装。

コーベ・ブックスの装丁センスにも脱帽です。

稲垣足穂や澁澤龍彦など親交のあった作家は勿論、硬派な作風の吉田一穂、滋味深い中村苑子なと、一寸意外を感じる様な書名も多く見られます。

現在に於いてもコアなファンを中心に支持を集める加藤郁乎の文学世界。

彼にとっての特別な書を集めた一冊は、堅苦しい書評集としてよりはむしろ、無邪気で妖しいブックガイドとしての魅力に満ちています。

海野弘「部屋の宇宙誌」 TBSブリタニカ 初版

ヨーロッパにおいてはその生活の隅々に黙して潜む、神秘と珍奇の符丁。

海野弘による「部屋の宇宙誌」では、家具・インテリアの分野からその多くを拾い上げています。

絢爛な表紙、豊富な図版。

インテリア本らしからぬ単語が飛び交うレポートの数々に心が踊ります。

暖炉、カーテンなどの馴染みのあるインテリアから、チャイニーズルームなど現代ではあまり聞かない様式の物まで。

本好きにとっては書斎を構成する多くの調度品に、新しい興味が芽生えそうなユニークな一冊。

年末年始の大掃除、模様替えの前のご一読に如何でしょうか。

金井美恵子「詩集 マダム・ジュジュの家」 思潮社 初版栞付き

シルバーを基調とした姉・久実子による装画も美しい金井美恵子による詩集。

表題作「マダム・ジュジュの家」を含む多くの詩は、煮えるような情念を氷の声にて語ります。

姉・久実子氏による、繊細で美しい装画が銀の表紙に冷たく映えます。

幻想的なモチーフを多く扱いながら、血と肉ごと自身を抉るような痛切な言葉が抒情を刻み付けてゆきます。

幼き肖像のプリントされた付録の栞と、表題作「マダム・ジュジュの家」。

小説の多い金井美恵子作品ですが、詩集に於いてもその美学は頁のそこかしこに揺るがず、絶えず、水銀のように流れています。

中井英夫「初期短編集 彼方より」 深夜叢書社 初版1000部発行 函付き著者署名美本

戦前の詩作品から戦後期の日記と、黒鳥館主人・中井英夫の若き日の文学を収録した貴重な一冊。

深夜叢書社より初版1000部発行の物を入荷しております。

抽象的なモノクロ画が全面に施された函と対比をなす、タイトルのみの真っ赤な装丁。

戦前詩編、戦中日記、戦後日記の三部編成。

当時の写真も附されており、美青年です。

当時の直筆の日記や殴り書きした絵なども随所に盛り込まれています。

詩作品は特に、憂いをおびながらも瑞々しい幻想描写に富み、後の作品に連なる美しさを感じます。

金子國義画集「エロスの劇場」 小学館 三刷函帯

没後、ますますその評価が高まる画家・金子國義。

耽美を体現した彼の画業を多くの角度から紹介するファン必携の画集「エロスの劇場」を入荷しております。

版画、油彩作品など魅力的な作品を大判の頁でじっくり眺める愉悦。

また、製作過程や多くの文化人との交流の逸話をも写真と共に掲載。

金子國義画伯の美学を多くの側面から伺える豪華な内容。

特異でありながらクラシックな強度を持つ作品の美しさに耽溺できる良書。

是非店頭にてお手にとりお確かめ下さい。

中野美代子「ゼノンの地図」 初版函美本

中国など大陸文化の研究に数多の功績を残しながら、幻想的な筆致の小説を書いた中野美代子による作品。

ひんやりとした装丁も美しい「ゼノンの地図」入荷してございます。

金属質の風合いをもったシンプルなブックデザイン。

種村季弘との対談を収録したミニ冊子が封入されています。

ヨーロッパ的な文化をベースとした幻想文学とはまた違ったテイストを持つ描写は、美しくも新鮮です。

地球上の全てに潜む幻想や異界の美。

未だ知られざる多くのそれらへ会いにゆきたくなる様な魔力が、ゼノンの地図には宿っているようです。

宮武外骨「筆禍史」 大正11年四刷 発禁本

自らの出版物へも多くの発禁処分を受けた宮武外骨による、抹殺された書物史。

威圧的な黒い函と、誇るように鮮やかな表紙の金文字。

函はキズ、スレなどが目立ちますが、本文は比較的良好な状態です。

残虐な刑罰、反逆者の末路、また公には語られないまま葬られた言葉たち。

白い頁のそこかしこに散らばる、多くの闇に引き込まれる様です。

また江戸期ごろよりの地下風俗史に関するレポートもあり、カゲマ茶屋のカラー挿絵なども。

現代に比べ遥かに言論・表現の自由に制限のあった時代。

そこにあっても伝えるべき、語るべきを追求し続けた外骨による、反骨を体現する一冊です。

島尾敏雄「島の果て」 成瀬書房初版函極美本、限定415/500部

夢遊病者の中で融け合う、現と幻。戦後文学に於いて孤高の中特異な文学を書きつづけた島尾敏雄。

成瀬書房刊行の限定本が店頭入荷しております。

二重の函に安置された眠り人の、痛む様な言葉と、心。

本文用紙も寝台のシーツの様に白く保たれています。

朱書きの四百拾五。

龍の影はどこか覚束ない飛び石や、島々の連なりを連想させる様です。

関東大震災、第二次大戦の激動を経て、没年に至るまで書く事を止めなかった島尾敏雄。

多忙なる生活の無意識下にて醸成されたその内的文学体験の発露が美しくも切ない一冊になっています。

永井荷風「雑草園」 中央公論社初版函

日本を代表する文学翻訳者にして、繊細で奥行のある随筆を多く遺した永井荷風。

後期の随筆集・雑草園には、彼の文学の完成に至る無数の断片に触れる事が出来ます。

若き日の洒落た装いの荷風。

文学という芸術が、他の多くの文化を牽引していた日々。

大正ごろから戦後間もなくの書籍によく見られるこういった囲み罫は、永井荷風の美文に不思議としっくり馴染む気がします。

翻訳家として溢れる程の海外の思想や文化に触れながらも、その感性の純粋は濁りなく。

雑草に煌めく朝露のように、透明に切り取られた記録に親しめる一冊です。