「ラングストン・ヒューズ詩集」 木島始訳 1966年 思潮社初版

アメリカ文学に於いて黒人としてのアイデンティティを極めて詩的に表現したヒューズ、そのブルーズを集めた稀有な一冊。

木島始による深みある翻訳も見事で、子供や女性の視点からの喜びや悲哀の詩からも透き通る切実さを感じます。

現在では不適切と言われるような言葉なども含みながら、極めて優しい眼差しに溢れています。

戦争や貧困など抑圧された生活の只中にあって、決して失われない尊い感情の数々。その美。

文学の持つ救いとしての側面が強く在りながら、白昼夢のような幻想をも感じる一冊。

アメリカ文化を愛好される方のみならずお勧めしたい作品です。

ルイス「アフロディット」 小松清訳 1952年 白水社初版 函付き

白水Uブックスなどで広く翻訳文学のファンを増やした白水社による、戦後復興期の名著。

ピエール・ルイスの代表作「アフロディット」を小松清の訳にて。

経年のイタミなどあれど、本文は比較的良い状態を保っており、白水社のしっかりとした本作りが伺えます。愛の女神の名を冠したピエール・ルイスのエロティシズム溢れる美文が、流麗な訳に乗って流れ出します。 近年、再びその魅力でファンを増やすピエール・ルイスの著作。

多くの訳、刊行物に恵まれた彼の作品。是非読み比べも含めお勧め致します。

ユリイカ「特集:デカダンス 爛熟と頽廃の美学」 1978年 青土社

現在も意欲的な特集を多く取り上げている青土社のユリイカ。

70年代後半刊行のデカダンス特集号では豪華な執筆陣にて、デカダンスの何たるかを語り尽くします。

目次に並ぶ胸踊るような題の数々。 生田耕作による執筆やボードレールの墓所のレポートなども掲載し、時間を忘れて読み耽ってしまう密度です。

近年、耳にする機会も減りつつありながらそこかしこに潜むデカダンス、頽廃の美。

その核心に迫る良質な一冊となっております。

アラゴン「イレーヌ」 生田耕作訳 1987年 サバト館初版 訳者署名入り 帯付き極美

シュルレアリスム文学の傑作として名高いルイ・アラゴンの作品を生田耕作訳にて読む贅沢。

サバト館刊行、訳者署名入りの物になります。

アンドレ・マッソン挿絵、上等な紙とゆとりのある余白は普及版ながら流石の出来栄え。  情感に満ちた言葉運びは素晴らしいの一語。豪華版、特装本のイメージが強いサバト館ですが、普及版においても魅力的な刊行物が多くございます。

是非店頭にてその内容、造本ともに妥協のない美しさをご覧下さいませ。

 

 

桐生操「きれいなお城の呪われた話」 1992年 大和書房初版 帯付き

フランス留学中に知り合った二人の女性による共同ネームにて刊行された、ヨーロッパに纏わるお城と怪奇の幻想譚。

二人のヨーロッパ貴族文化に対する愛と探究心によって綴られる、妖しく不可思議な美麗怪談。

目次を飾る様々な言葉には、幼少期に布団を被って恐る恐る見知った夢見混じりの恐怖が思い出されます。

一つ一つのエピソードもとても秀逸で、味わい深い物となっています。

どこか懐かしい手触りを備えた怪談話は、西洋の古城という入れ物にもヒンヤリと馴染むようです。

サンダスン「この世界を見よ」 1987年 アスタルテ書房 限定300部函付き極美完本

イギリスにて私家版を主として制作する印刷所を設立し、気高い思想をもってヨーロッパの装丁文化に影響を与えたサンダスン。

生田耕作訳・署名入り、当店刊行の「この世界を見よ」。極めて程度の良い完本となります。

「工芸の理想」「美しい書物」の二編を収録。良質な紙、刷り、製本。

書物としての美しさ、を追求したサンダスンによる、高潔で奥ゆかしい書物論が綴られています。

所謂ブックデザインとはまた違う、書物がただ美しくある為の洗練を極めた装丁の美。

その真髄に迫る、まさに美しい書物となっております。

クリス/クルツ「芸術家伝説」 大西広/越川倫明/児島薫/村上博哉訳 1989年 ペリカン社初版 帯付き

古今東西、あらゆる装飾を施されて語られ、伝えられてきた「芸術家の伝説」。

その実像を数多の資料を用いて詳らかに描き出す名著。ペリカン社刊行の意欲作。

目次にて湧き上がる好奇心を裏切らない、充実の内容。

まさしく幻想譚や神話の如き、芸術家を彩る様々な逸話を相手取り語り口は実直です。

巻末の圧倒的な資料、索引のボリュームに、三名の訳者の奮闘を思う素晴らしい作品。

美術ファン、また幻想小説愛好家の方にもお勧めを致します。

モリオン「閉ざされた城の中で語る英吉利人」 ベルメール挿画 生田耕作訳 1989年 サバト館初版 訳者署名入り 函付き

ピエール・モリオン名義で出版されたマンディアルグの、道徳的なる物への破壊の書。

生田耕作訳、署名入り。サバト館刊行の名著です。

状態はとても良好にて、漆黒の装丁が目を引きます。

頁の折々にベルメールの銅版画作品が別刷りのカードとして付されており、作品世界により深い闇を与えています。

目を背ける事も出来ない目眩くような悪徳の美に引きずりこまれるような、恐ろしくも魅力的な一冊となります。

アルトー「アンドレ・ブルトンへの手紙」 生田耕作訳 1978年 サバト館第2版 訳者署名入り完本

シュルレアリスム運動の重要な一人ながらブルトンと袂を別ったアルトー。

生田耕作訳、サバト館による意味深い一冊。訳者署名入りになります。

状態は良好。愛読者カード、新刊案内を付属。

小振りな本ながら、迫力と機知に富んだ辛辣な言葉に引き込まれます。

読む人に様々な事を思わせる力ある一冊です。

ライネス「ボマルツォ公の回想」 土岐恒二 1984年 集英社初版 函付き

澁澤龍彦などによって日本の幻想文学ファンにも広く知られるようになったボマルツォ。

集英社ラテン・アメリカの文学シリーズより6番、ムヒカ・ライネスの長編小説を入荷しております。

シリーズ物の一冊ながら、堅牢な造本が600頁超本文二段組のボリュームを支えます。

図版も多く収録し、主人公とボマルツォ庭園への深い共感を煽ります。

相当な文章量に、豊富な資料。土岐恒二による滑らかな翻訳。

ボマルツォに興味を抱く方にとって非常に魅力的な一冊です。