山田登世子「娼婦」 日本文芸社 初版函帯

バルザックの研究者として、またファッションや恋愛分野での著作も多い仏文学者による「娼婦」をテーマとした著作。

図版も美しい物を多く収録し、その魅惑的な存在へ深く切り込んでゆく筆致に引き込まれます。

書籍本体は純白の装丁、それはまったく正しいと思わせる説得力ある装丁です。

ファッションにも造詣の深い著者らしく、図版にも極めて美しい物がセレクトされています。

耽美・幻想分野ならずとも、芸術に於けるテーマとして多く登場する娼婦という存在。

その美しさを丹念に綴った、良質な一冊です。

日夏耿之介「残夜焚艸録」 竹村書房 初版限定1000部本

いち早く国内の文学における幻想美の研究に尽力し、後に澁澤龍彦へも影響を与えた日夏耿之介。

随筆を多く執筆した時期に刊行された「残夜焚艸録」、1000部本を入荷しました。

古い書籍ながら、本文はほとんどヤケ・シミなく。印影も美しく残っています。

ゴシック・ロマンを掲げた学匠詩人の扱うテーマは、評論分野に於いても独特の美学が貫かれています。

魔術、幻想、ゴシック…そう言った文化の日本での源流の一つとして、若い読書人の方にも評価の高い日夏作品。

取っつきにくい印象もある評論・随筆ですが、鮮やかな専門性を楽しむに必携の内容が備わっています。

矢野目源一「ヴォルガ浮かれ噺」 アソカ書房 初版

奇異にして偉大な文筆家として文芸史に名を残す矢野目源一による翻訳作品。

失われつつあるスラヴの昔話、伝承よりブラックでユーモラスな物を集めた、貴重なテキスト群。

目次を眺めるだけでも、猥雑ながらどこか教訓を含む小咄の数々に引き込まれる様です。

一瞬縦に読んで「?」となりそうな奥付けも雰囲気があります。

戦後間もなくの書籍で造本も紙の質も荒い物ですが、ロシアの民話を扱った内容は現代においても目新しい内容を孕んでいます。

世俗的な表現も光る物の多く、民話ファン以外にもお薦め致します。

ミルチャ・エリアーデ「妖精たちの夜 Ⅱ」 住谷春也・訳 作品社初版帯美本

宗教、民族学に多くの貢献をし、幻想の描写に独自のロマンを持つエリアーデ。

真夏の夜に向けたイメージの着火点のひとつに如何でしょうか。

造本、ミルキィ・イソベ氏。

メルヘンな書名ながら、時に激しい言葉や太字にて強調される単語にひやりとする感覚も。

また、多くの言語をマスターした著者ならではの含む物の多い描写も味わい深く。

お薦めを致します。

鹿島茂「レ・ミゼラブル百六景」 初版美本

当代随一のフランス・マニアにして愛書狂、鹿島茂による初期の著作。

素晴らしい木版図版も豊富な一冊です。

味わい深い木版挿絵、滑らかな鹿島語り。

背表紙にいたるまで抜かりないデザインになっております。

そして圧巻、書籍掲載の木版画家一覧。

現在も精力的に執筆を続ける鹿島茂氏、この本からも強い情熱と愛を感じます。

クロード・セニョール「黒い櫃」 山田直・訳 創土社初版函

ある想念の黒い塊。

知る人ぞ知る幻想文学者、クロード・セニョールの著作。函帯月報付き美本です。

訳者はヴァレリーの訳作品を多く送り出した山田直。

かなり分厚い本ですが、魅了される様な言葉の数々を追う愉しみを逆に煽り立てる、存在感ある良書です。

ルイス・キャロル「もつれっ話」 帯つき極美

童話の様な、パズルの様な、寸劇の様な…。

「アリス」シリーズで有名なキャロルの知られざる名著、帯つきにて入荷しております。

内容に合わせた幾何学的な佇まい、帯にはパラフィンがかけられヤケ、イタミ共にない美本です。

「アリス」シリーズにてお馴染みの謎かけや論理の転倒をさらに発展させた様な言葉の数々。

しかして読み口はスムースに、ぐるぐると頭を巡るイメージの奔流にいつしか心地よい痺れを楽しむ様になるでしょう。

無邪気な感性と高度な思考、訳者も相当苦労なさったでしょう。

しかしキャロルはこの本も子供たちに語り聞かせたのでしょうか。

堀口大學 訳「グールモン詩集」 初版極美本

堀口大學訳「グールモン詩集」、弥生書店刊。

現在ではあまり語られる事のない堀口大學の名訳作品を入荷しております。

アイボリーに濃紫色の見返しがエレガント、反骨の詩人の著作を彩ります。

鋭い筆致をコントラスト豊かに邦訳してゆく堀口大學の手腕。

文化に盛衰あれど、一度世に出た芸術は死なず。

忘れがたき作品の数々、どうかお楽しみ頂ければ幸いです。

堀口大學「訳詩集 月下の一群」 第一書房 昭和3年革装丁本

堀口大學の代表的な訳詩集。第一書房の端正な造本により、詩神の秘密を一緒に閉じこめた様な美しさ。

「月下の一群」、革装丁の物を入荷しております。

古色豊かな装丁を際立てる天金の輝き、背に割れはございますが丁寧に扱われてきた印象を受けます。

簡潔なインフォメーション、朱色の文字の色気。

装飾つきの本文。

そして内容は超一流の、芳醇な詩の溢れるミューズの泉。

日本語の書籍で革装丁の物自体稀少ながら、こちらはさらに「月下の一群」。

書斎の一等安全な区画にて、共に時間を重ねたくなる一冊です。

三島由紀夫・池田弘太郎 訳「聖セバスチァンの殉教」 初版極美完本

先日の未発見テープ発掘の報も大々的に、近年再び大きな注目を集める三島由紀夫。

その精神の発露のピュアな一端としての「聖セバスチァンの殉教」、血のように真っ赤な装丁と共に。

状態、非常に良好。

端正に組まれた行はどこか葬列を思わせ、余白の荒野を粛々と進みます。

図版にも多くのページが割かれ、イメージを補強してゆきます。

厳格さ、高貴さ。

赤という色彩の強度を最大限活かした装丁を含め、代表作に相応しい一冊になっております。