吉井勇 歌集「悪の華」 竹久夢二木版装丁・函

優美で整った語り口、爵位持ち、愛妻家。谷崎・白秋・啄木らと親交を持ち、耽美派ながら誠実な作風を極めた吉井勇の心象がこだまするような歌集。

竹久夢二の手による木版装丁に天金が麗しい一冊です。

img_20160910_153818-1600x898

タイトル絵も残酷ながらどこか「粋」を感じさせる雰囲気。

1頁2首という贅沢な配置が吉井短歌の深みある言葉の響きを、より強く共鳴させます。

img_20160910_154025-1600x898img_20160910_154053-1600x898

約90年前、この本に心震わせたであろう少女の。鉛筆書きなので消せますが、遠い記憶に思いを馳せるのも古書の価値です。

img_20160910_154124-1600x898

名のよく通った大文豪にも、志をともにした同人仲間がいて、その彼にもファンがいて、今に残る足あとがあり、いつか今の人達も。

この本もきっと、ずっと巡ってゆくでしょう。

澄んだ歌の内容も、美麗な装丁も、保存状態も全て良好。貴重な一冊です、オススメいたし升。

ストリンドベリー 著/杉山誠 訳「令嬢ジュリー」初版帯極美

秋の夜長、コーラ片手のDVDの視聴に疲れたら戯曲を読むのは如何でしょう。

激しくもリズムは緩やかな三拍子、時代の波に翻弄された劇作家ストリンドベリーの名作戯曲「令嬢ジュリー」。杉山訳・三笠書房刊行、端正なルックスの初版帯付き極美本です。

img_20160910_154701-1600x898

ビニールカバーもキレイなまま、自然派の素朴さと主人公・ジュリーの情熱を感じる良い装画です。

img_20160910_154726-1600x898

台詞と舞台の状況、人物の出で立ちや立ち居振る舞いをテンポよく読める戯曲という記述の愉しみは、物語上のすべてを噛み締めながら緩やかな没入を誘います。

img_20160910_154803-1600x898img_20160910_154830-1600x898

表情豊かな登場人物たちに寄り添うように、時に恐る恐る、時にハツラツと、彼らにシンクロするようにページを繰る指に熱がこもってゆく感覚。

ジュリーの運命やいかに、ドラマティックで古式ゆかしい読書体験が味わえる一冊です。

ヤンセン 著/種村考弘 訳「リッツェ」初版帯美本

現代線描画の最高峰と謳われながら自ら狂人を名乗ったホルスト・ヤンセン。

彼の「複製拒否」の絵物語リッツェ、翻訳の奇術師・種村訳にして耽美の博覧会場・トレヴィル刊行。

img_20160910_160339-1600x898

滴るような赤い装丁を際立たせるヤンセンの絵。タイトルの書体もこれ以外にナシと感じます。

img_20160910_160404-1600x898

冬に閉ざされた城、美しい少女と少年たち。ヤンセンの描線が閉鎖空間で起こる無邪気さに導かれた残酷な「性」を、痛々しいほど優しく柔らかく切り取ります。

img_20160910_160505-1600x898img_20160910_160534-1600x898

子供の頃の残酷な自己の側面を思い出して、大人になってから身震いした方は多いのではないでしょうか。

「美しさ」をそれらに付与しようとするヤンセンの筆は、もしかすると当時の少年ヤンセンへの一つの供養、なのかもしれません。痛みなく、美本です。

寺山修司「不良少女入門-僕の愛した少女」初版帯

日本文学史に残る「こじらせた」作家、寺山修司の少女観、そしてその源泉とは。

寺山修司「不良少女入門」、かわいい表紙もきれいなままの初版帯付き入荷しています。

img_20160910_155112-1600x898

赤黒ベースの本体に少女の淡やかな白い肌、まったくもって映えます。

img_20160910_155725-1600x898

一般的には「田園に死す」の白塗り学帽的なイメージの寺山修司の、ひたすら自分に必要な「美学」を貪っていた青春時代のお話がたっぷり。

img_20160910_155830-1600x898img_20160910_155919-1600x898

そして、ある意味二宮金次郎的なストイックさすら感じるその視線が投げられた銀幕に、物語の幕間の一瞬に、彼の目に焼き付けられたヒロインたち。

研ぎ澄まされた美しさは、いつの時代も不良とカテゴライズされるのかもしれません。寺山入門としてもオススメです。

谷崎潤一郎「鍵」初版極美

谷崎一流の流麗な言葉のパズル、心の組木細工が味わえる名作「鍵」。

中央公論社函付き初版、ほとんどダメージなしの極美本です。

img_20160910_153511-1600x898

棟方志功の民芸調の装丁ながら、扉絵から感じる生々しく踊る命の芳しさ。

img_20160910_152941-1600x898img_20160910_153559-1600x898

挿絵も多く、スッキリとした印象のページ。故に活きてくる濃密な愛慕の物語・・。

img_20160910_153636-1600x898

背徳を感じる程度には残る善性混じりの悲しい想い・愛欲と、それを軽々と越えて飛翔する罪深い恋のたくらみ。

映像化の機会も多かった本作は、心の危険な扉を開ける囁きも多々。どうぞお気をつけて読み進め下さい。

「うつわ・あにゆある」創刊準備号 澁澤龍彦・塚本邦雄 他

 

秋と言えば、名月に傾ける団子と盃。そしてウツワ。

幻の冊子うつわ・あにゆある、創刊準備中が棚からぽとり。

IMG_20160830_151620-1600x898

高名な古楽器製作者からイッセーミヤケ、我らが澁澤龍彦氏などなど。

ちょっと豪華過ぎるメンバーがそれぞれのウツワ観をアンケート形式に語ります。

IMG_20160830_151759-1024x1824

よく見れば編集サイドもゴージャスな顔触れ、この冊子を世にだした器皿産業様に乾杯です。

IMG_20160830_151830-1600x898

英訳版とセットになっていたり繋がりの分からない各方面の人選と、どこか不思議なこの冊子。

大物達のエピグラムめいたウツワ観と相まって、秘密結社の機関誌のような雰囲気が、秋の夜長の枕元に妙に合うようです。

里見惇「桐畑」 太陽堂・大正10年初版


人の心の機微を鋭く観察し、あくまで善心に寄ろうとしたまごころ文士・惇。

素朴な装丁の桐畑、状態も良好に大正十年の発行です。



 

IMG_20160830_150957-1600x898

紙の手触りがなんだかホロリと懐かしい。函もダメージ少なく残っています。

IMG_20160830_151042-1600x898

IMG_20160830_151121-1600x898

この時代の本としては、本文デザインなどから現代的な印象を受けます。

IMG_20160830_151229-1600x898

著者本人はかなりのプレイボーイだったようですが、故に自他の多くの心の軋みとも向き合って生きたのでしょうか。

それらに立って尚、優しい眼差しを保つ文章は、間違いなく美しい様々を読後の私達に残してくれます。

稲垣足穂・一千一秒物語双書「一千一秒物語」 絶版・帯付き美本

読み進める内に自ら神戸の山の手を酔っ払って歩いている錯覚に満ちてゆきます。

イメージの魔人・タルホの代表作「一千一秒物語」、透土社発行。

IMG_20160830_150658-1600x898

当店も僭越ながら資料提供をさせて頂きました。

タルホの本にはやはり、こういった派手な装丁もピタリとハマります。

IMG_20160830_150717-1600x898

IMG_20160830_150813-1200x2137

毎回毎回、本を開く度に出会う扉の呼び掛けに、飽きもせず胸が高鳴ります。

IMG_20160830_150738-1600x898

有名な作品は、多様な出版元の多彩な「同じ本」からお気に入りの一冊を見つけ出すのも読書家の愉しみで嗜み。

そう言ったお話も是非、当店のソファでゆっくりご相談できれば幸いです。

マンディアルグ 著/澁澤龍彦 訳「ボマルツォの怪物」 初版美本

幻惑的な筆さばきで現在もファンを増やし続けるマンディアルグ、に澁澤龍彦訳の蛇の道の王道的作品。

函帯付き、非の打ち所のない保存状態。大和書店初版本。

IMG_20160830_150337-1600x898

背函、帯に勿論本文まで一切の焼けもなく。

マンディアルグ・澁澤が月下の岩より切り出す鮮やかな物語の造形を、邪魔の入らない余白の上でお楽しみ下さい。

IMG_20160830_150416-1600x898IMG_20160830_150602-1600x898

何となく日本人的な感覚でお化け屋敷的な印象も持ってしまうイタリア・ボマルツォ村の怪物公園。

そこに漂う哀しみや愛の幽かな語らいを、夏の終わりにこそどうぞお聞き逃しなく。

久生十蘭「眞説・鐵假面」 初版函帯

演出家としても知られる久生十蘭の翻案物、「眞説・鐵假面」。

桃源社の初版、函帯付きの美本が入りました。

IMG_20160830_145955-1600x898

薄紙越しの色合いが艶っぽい、函帯に若干の傷みありですが本体は健康です。

IMG_20160830_150038-1600x898

IMG_20160830_150150-1600x898

雑誌連載時の資料が巻末についています。

鐵假面と言えば黒岩涙香の翻案が有名ですが、久生案のスピード感ある眞説も読む愉しさに溢れています。

IMG_20160830_150209-1600x898

口述筆記での執筆や演出家としての経験などからか、言葉のテンポや歯切れに味のある久生作品。

一風違った筆致の妙を味わいたい方に。

鐵假面、他数作品入荷しております。