鈴木泉三郎 戯曲集「ラシャメンの父」大正八年初版/著者献呈署名・生田耕作旧蔵印

日本の戯曲界をリードした劇作家、鈴木泉三郎の代表作「ラシャメンの父」。

1920年刊行、著者から生田耕作へ宛てた献呈署名入りの物。

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函に剥がれなどありますが、本体は愛書家・生田らしく美しいままに残っています。

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ざっくりとした文字の癖が、ニヒルもダンディも越えた著者のおおらかさを感じさせます。

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刊行当時は生まれていなかった事を考えると、その後お二人が出逢ってから署名をお願いしたのでしょうか。

日本に戯曲が息づく初期段階の名作は、きっと若き文学青年に多大な霊感を与えたのでしょう。背景含めて、麗しい物語が綴じられています。

 

鹿島茂「愛書狂」 角川春樹事務所初版帯極美

「わたしには、この本たちを世に知らしめる義務がある─」。

世界中の編集者・書店員がお気に入りの作品を前に思いながらも、中々口に出せない台詞を恥ずかしげもなく惜しみなく。

鹿島茂より届いた奇書怪書ガイドの決定版「愛書狂」、角川春樹事務所の硬派な一面。初版帯付き極美はいっております。

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分厚い、情熱と執念の結晶体。漆黒、です。

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カラー挿絵も豊富、定番の奇書からタイトルの文字列に出会う事も稀な世界の外側にある一冊まで、読書家にとっての遊園地がここに。

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鹿島氏の熱っぽくもライトな語り口が秀逸な一冊。

熟練のコレクターにも読書に興味を持ち始めた若人にも、本を愛するという事の喜怒哀楽がストレートに伝わる良書です。

A.バタイユ・著/小川泰一・訳「結婚の曲」 白水社昭和2年初版

バタイユ、ですがこちらは悲恋物を得意とした劇作家のアンリ・バタイユ。

昭和ひと桁の昔より、白水社による木版装丁も可愛らしい「結婚の曲」入荷しております。

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棚にそうっと飾りたくなるような表紙、深く枯れた青に鮮やかな花。

状態は完全とは言い難いですが、経年の味が定着できるしっかりとした造りの本です。

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美男子アンリの肖像。

戯曲仕立ての物語では貴族の娘と売れない青年音楽家の駆け落ちが、当時の仔細な生活様式を通して描かれます。

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豪華絢爛な貴族社会の晩餐会や衣装のディテール、振舞いの描写と、安宿で睦まじく卵を茹でるカップルの対比を鮮やかに切り取る序盤は、まるで19世紀末のフランス全体を俯瞰する様なリアルさがあります。

アンリ・泰一氏ともに相当な語り巧者。装丁・内容ともに文学少女的な麗しさに満ちた一冊です。

ストリンドベリー 著/杉山誠 訳「令嬢ジュリー」初版帯極美

秋の夜長、コーラ片手のDVDの視聴に疲れたら戯曲を読むのは如何でしょう。

激しくもリズムは緩やかな三拍子、時代の波に翻弄された劇作家ストリンドベリーの名作戯曲「令嬢ジュリー」。杉山訳・三笠書房刊行、端正なルックスの初版帯付き極美本です。

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ビニールカバーもキレイなまま、自然派の素朴さと主人公・ジュリーの情熱を感じる良い装画です。

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台詞と舞台の状況、人物の出で立ちや立ち居振る舞いをテンポよく読める戯曲という記述の愉しみは、物語上のすべてを噛み締めながら緩やかな没入を誘います。

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表情豊かな登場人物たちに寄り添うように、時に恐る恐る、時にハツラツと、彼らにシンクロするようにページを繰る指に熱がこもってゆく感覚。

ジュリーの運命やいかに、ドラマティックで古式ゆかしい読書体験が味わえる一冊です。

ヤンセン 著/種村考弘 訳「リッツェ」初版帯美本

現代線描画の最高峰と謳われながら自ら狂人を名乗ったホルスト・ヤンセン。

彼の「複製拒否」の絵物語リッツェ、翻訳の奇術師・種村訳にして耽美の博覧会場・トレヴィル刊行。

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滴るような赤い装丁を際立たせるヤンセンの絵。タイトルの書体もこれ以外にナシと感じます。

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冬に閉ざされた城、美しい少女と少年たち。ヤンセンの描線が閉鎖空間で起こる無邪気さに導かれた残酷な「性」を、痛々しいほど優しく柔らかく切り取ります。

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子供の頃の残酷な自己の側面を思い出して、大人になってから身震いした方は多いのではないでしょうか。

「美しさ」をそれらに付与しようとするヤンセンの筆は、もしかすると当時の少年ヤンセンへの一つの供養、なのかもしれません。痛みなく、美本です。

マンディアルグ 著/澁澤龍彦 訳「ボマルツォの怪物」 初版美本

幻惑的な筆さばきで現在もファンを増やし続けるマンディアルグ、に澁澤龍彦訳の蛇の道の王道的作品。

函帯付き、非の打ち所のない保存状態。大和書店初版本。

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背函、帯に勿論本文まで一切の焼けもなく。

マンディアルグ・澁澤が月下の岩より切り出す鮮やかな物語の造形を、邪魔の入らない余白の上でお楽しみ下さい。

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何となく日本人的な感覚でお化け屋敷的な印象も持ってしまうイタリア・ボマルツォ村の怪物公園。

そこに漂う哀しみや愛の幽かな語らいを、夏の終わりにこそどうぞお聞き逃しなく。

久生十蘭「眞説・鐵假面」 初版函帯

演出家としても知られる久生十蘭の翻案物、「眞説・鐵假面」。

桃源社の初版、函帯付きの美本が入りました。

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薄紙越しの色合いが艶っぽい、函帯に若干の傷みありですが本体は健康です。

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雑誌連載時の資料が巻末についています。

鐵假面と言えば黒岩涙香の翻案が有名ですが、久生案のスピード感ある眞説も読む愉しさに溢れています。

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口述筆記での執筆や演出家としての経験などからか、言葉のテンポや歯切れに味のある久生作品。

一風違った筆致の妙を味わいたい方に。

鐵假面、他数作品入荷しております。

生田耕作一周忌 特別編集誌 「忘れられた詩人に捧ぐオマージュ」

日本に於けるフランス文学の普及に務め、惜しまれながらも旅立った生田耕作。

氏の一周忌に捧げられた極々簡素で美しい書物。

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凛としたご夫人の挨拶状にも、キラキラと氏の手が添えられているよう。

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翻訳者として多くの埋もれそうな名作美文を見つけ出し、ランプの照らす机の上で読者と楽しんできた氏の喪失は限りなく大きく悲しく。

そしてまた次代の文芸への確かな萌芽をもたらした氏の偉業を、ゆっくりと確かめる事ができる一冊です。

J.リゴー「自殺総代理店」 亀井聡・松本完治 共訳

不吉な、それでいてどこか喜劇的なタイトルが目を引くダダイスト・リゴー幻の名著。

フランス映画好きな読書人にも是非お薦めの一冊です。

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仏映画「鬼火」のモデルともなった文人は自らの心臓をピストルで撃ち抜いて…。

文学史の地下深く埋葬され名前すら忘れかけられながらも、この本が甦った事実。

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翻訳者の使命の1つ、気高い発掘。それを高度なレベルで実現している二人の作家とこの本に、どうか清い光が当たりますように。

石津ちひろ・著/宇野亜喜良・挿絵 「アナグラム人名図鑑」

近年注目の高い回文や集字法と言った言葉遊び業界、そしてポップなアナグラム遊びは是非こちらでご堪能を。

たっぷりのウノ・イラストもボリューミーで欲張りな一冊。

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東西の著名人・文人の名前をアナグラムの指が一撫ですると…。

軽妙奇妙なイメージに宇野亜喜良のタッチも酒脱です。

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一見してそれと分からない技巧派から心の沼の底を探り当てるような作家まで、あらゆるカラーを引き出せるアナグラム。

この本に触発されて、お気に入りのノートにカナやアルファベットをばら蒔いてみる一日もきっと楽しいでしょう。